Abstract : |
「はじめに」いわゆる原発性心筋疾患と呼ばれている疾病群は除外診断法により, おおよその疑診はつけられるが, 確定診断は解剖所見をまたなければならなかつた, このため当疾病群の研究は非常にたちおくれている. 原発性心筋疾患とは各種の心筋炎, 心筋線維症および心筋の腫瘍などを含む総称である2)3)37). 表1はMattinglyが当疾病群を病因別にまとめた分類表である, いずれも臨床家にとつては比較的耳新しい病名であるが, 病理学者からの報告は決して稀れではない, 1964年, 著者は心筋生検法の技術を指導するため, アフリカおよび中近東の病院を訪れたが, 外来患者の16%が当疾患に蝕まれているような不幸な民族もある. 上田英雄教授1)は早くから当疾患の重要さを説き1963年に非血管性非弁膜性心疾患という名称で日本臨床に特集号を編集し臨床家の注意を喚起している, わが国でも当疾患の病理報告は年々多くなり注目されるようになつた. 原発性心筋疾患の病因究明は今日, 心臓病学に課せられた最も重要な問題のひとつである, しかし当疾患に関するかぎり間接的な機能検査を主とした現在の診断方法はゆきづまつており, どうしても形態学的な立場にもどり確実な資料を得て組織学的および組織化学的な研究を進めなければならない. |