Authors : |
船木治雄*, 池田貞雄*, 諫山高雄*, 島文夫*, 伊藤通成*, 後藤田圭博*, 粟根康行*, 若林明夫*, 関正威*, 上野明*, 阿曽弘一*, 浮島仁也**, 四方淳一** |
Abstract : |
「はじめに」近年, 合成代用血管の確立, 普及によつて腹部大動脈瘤や胸部の下行大動脈瘤の手術成績は著しく向上した. しかしながら, 上行および弓部の大動脈瘤となると, 複雑な心疾患以上にその外科的治療の成績は芳しくない. これは一般に認められているように, この疾患が高令者に多く, 梅毒や動脈硬化などを基盤として発生するために, 全身の多くの臓器とくに心臓や腎臓の機能がおかされていることが多いことに加えて, 上行大動脈を遮断することが生理的に非常に重篤な問題をはらんでいること, 動脈瘤の周囲の剥離の過程での破裂の危険や, 剥離面からの大量出血など, いずれも生命をおびやかすような問題が多いからである. 著者らは過去15年間の教室の上行および弓部の大動脈瘤の手術に際して, ことに破裂例では, 大動脈瘤の剥離をすすめて行く過程でこれを損傷し, 大出血をきたして死亡させた苦い経験があり, また剥離の途中で破裂がまぬがれえないと考えられたため, 止むなく, 治療的な手術をあきらめ, 試験開胸に終つた症例も経験した. |