Abstract : |
「緒言」上大静脈症候群は上大静脈もしくは両側腕頭静脈の閉塞の結果引起される一連の症候群であつて, 原因疾患には種々のものものも挙げられているが, 特に胸腔内悪性腫瘍に起因する場合が多い. 本症候群は最盛期に於て顔面, 頚部, 上胸部ならびに上肢のチアノーゼおよび浮腫, 呼吸困難等を主微候とする特異な臨床症状を呈するが, 時期の経過とともに副血行路が形成され, 次第に症状が消褪するのが常であり, この場合における循環動態の変化, , 副血行路の状態については, 1930年項より報告されておるが1), 未だ詳細な研究は見られない. 著者は上大静脈症候群における, 閉塞部位と副血行路の形成の関係と, それに伴なう体循環ならびに臓器循環の変化を動物実験にらびに臨床例で経時的に追求する事により, 本症候群の病態を動的に把握せんとして本研究を行なつた. 一方, 近年肺癌の増加とともに本症候群を呈する症例も次第に増加し27), この様な癌患者に対し, 一部の研究者は, 積極的に肺, 上大静脈合併切除療法及び血管移植を試みている2)3)4)5), 然し静脈移植の成巧率は極めて低く, 移植グラフトの永久的開存は望めない状態であり, 上大静脈再建術の可否に就ても充分な決論が得られていない現状である. かかる観点より著者は自験症例をもとに, 本症候群の治療法についても検討を加えた. |