Abstract : |
「第1章 緒言」 近年胸部外科領域における手術適応の拡大から, 頚胸部気管切除後の再建が重要な課題となつてきた. 従来気管全周欠損の再建法には端々吻合1)以外, 幾多の先人の実験的乃至臨床的研究に拘らず, 末だ安全確実な方法はなく, 例えば自家移植片の応用2)~4)では支持力ならびに技術的面で難点があるとされ, 一方同種または異種移植片5)6)では新鮮または保存いずれの場合も免疫学的障害を打破し得ず, 悲観的結果となつている7)~9). 最近Grillo等は従来端々吻合可能とされていた切除範囲をかなり拡大したと述べているが10), 手術手技上にかなりの難点があり, また同種気管移植における抗免疫剤の応用の報告11)も散見するが, 現在なおこれらは普遍的方法といい難い. 著者の教室では十数年来, 全く独自の立場から気管の異物形成術(Alloplastik)に関する一連の研究を推進してきたが, その一環として著者は新しい高分子有機化合物を材料とし, 手術方法にも改良を加え, 気管全周欠損におけるAlloplastikについて検討を加え, 特に本研究の隘路ともいうべき肉芽増生に伴う晩期狭窄に関して新知見を得たので, ここに教室における気管全周欠損後再建の3例の経験と併せて報告する. |