アブストラクト(16巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺血流減少性先天性心疾患の肺微細構造に関する研究-Fallot氏四徴症を中心として-
Subtitle : 原著
Authors : 平野勝彦, 武内敦郎
Authors(kana) :
Organization : 大阪医科大学大学院研究科外科学
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 16
Number : 8
Page : 819-838
Year/Month : 1968 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 近年, 直視下心臓内手術の安全性の向上に伴つて心疾患の手術適応は著しく拡大されてきた. 肺血流減少性先天性心疾患特にFallot氏四徴症に対する手術もBlalock&Taussig1)手術に端を発した各種短絡手術からLillehei2)らに始まる直視下根治手術へと大きく変遷をとげてきた. しかしながらその成績は現在においてもなお必ずしも良好ではなく, したがつて臨床的に重症と判断された症例には, いまなお短絡手術による姑息的治療に甘んじなければならない現況にある. 本症の各種手術成績をいかにして向上せしめうるかということは, いわば先天性心疾患における究極の目的といつても過言ではないと思われる. Fallot氏四徴症に関する記載は1672年Stensenに始まり, 1888年Fallotがその解剖学的特徴を報告して以来, 多数の報告がみられるが, 主として病理解剖学的な研究であつた. しかし近年のめざましい心臓外科の発展によつて本症の長期生存も可能となり, さらには根治手術によりほゞ正常の血行動態をうることが可能となりつつある現在, 手術成績を左右すると考えられる形態学的および機能的因子についての検討が強く望まれるところである. 例えばこの複雑な心奇形によつて惹起される肺血行動態の異常が, 肺の構造にどのような影響を与え, 如何なる変化を招来しているか, またこのような肺の変化が外科的療法に如何なる影響をもたらすか, ということは非常に興味深い問題である. Fallot氏四徴症の肺の構造上の変化を光学顕微鏡的に検索し, この変化と手術成績との間の関連性を推定した報告3)4)は若干みられるが, さらに進んで肺の微細構造上の変化をも合わせ観察する必要があると思われる. 近年, Low5)を始め多くの研究者6)~9)が電子顕微鏡を用いて正常肺の微細構造を明確にし, さらに進んで先天性ならびに後天性心疾患の肺微細構造の変化についても多数の報告がみられるようになつたが, 肺血流減少性先天性心疾患の肺微細構造の変化を観察し, 臨床検査所見との関連性を検討した報告は見受けられない. これらの点に鑑み, 肺血流減少性先天性心疾患特にFallot氏四徴症を中心として, 肺組織の変化を光学顕微鏡的に検索すると共に, 電子顕微鏡による肺の微細構造の変化の観察を行ない, この所見と臨床検査上の諸所見との関連について検討し, さらに対照として正常肺および軽症心室中隔欠損症の肺組織の検索を行ない比較検討した結果, 以下の如き興味ある知見を得た.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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