アブストラクト(16巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環下心臓手術における溶血現象に関する研究-とくに心嚢内貯溜血について-
Subtitle : 原著
Authors : 内田実, 武内敦郎
Authors(kana) :
Organization : 大阪医科大学大学院研究科外科学
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 16
Number : 8
Page : 839-861
Year/Month : 1968 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 人工心肺装置の研究は1937年Gibbon13)によりはじめて着手されたが, その臨床応用は1951年Dennis5)等により初めて試みられ, 次いで1953年Gibbon13)は人工心肺による心房中隔欠損症の直視下根治術の最初の臨床成功例を報告した. その後, Kirklin26)は1956年にGibbon-typeの人工心肺を用い, またLillehei31)は1956年に独自の気泡型人工肺を用いて, 多数の手術例を報告した. 本邦では1956年曲直部34), 榊原47)等が人工心肺による直視下心臓手術の成功例を報告して以来, その間装置の改良, 潅流技術の向上, 体外循環の病態生理の解明, さらには潅流液の研究等の多数の研究により手術手技の向上と合いまつて現在では2時間内外の体外循環も比較的安全に施行される段階に至つている. しかしながら, 体外循環法は現在なお完成されたものとはいい難く, より複雑な心疾患や心筋障害の合併する重症例へ手術適応を拡大させるためには, 長時間体外循環が一層生理的に行なわれることが要求され, 大量の輸血によつて惹起されるhomologus blood syndromeないしはsludgingの防止の目的で人工心肺装置内のヘパリン加血液を適当量のplasma expanderで稀釈する, いわゆる稀釈体外循環法が推奨されている. さて, 長時間体外循環に際してのりこえるべきもう1つの障害は溶血現象の発生であり, 田口59), 砂田57), Doberneck8), Hirose17), Yeh67), 三枝50)等の報告にもみられる如く術後急性腎不全の発生と密接な関連性を有しており, 手術成績を左右する大きなfactorとして注目されて来た8). 体外循環に際して溶血発生の原因因子としては従来からポンプおよび人工肺等の装置面の要因があげられているが, それらが決定的因子ではないとする説もあり, 最近Morris41)は溶血現象の源泉としては, 従来報告されて来た人工肺, およびポンプ, 吸引装置等も関与しているが, 主として心嚢内および胸腔内に溢出した血液にありとする注目すべき報告を行なつた. そこで著者は体外循環により起る溶血現象の原因として従来考えられて来た各因子について再検討を加えるとともに, 心嚢内貯溜が高度の溶血現象を引き起こす要因について臨床的ならびに実験的研究を行ない, さらに溶血現象と術後血清蛋白分画の変動との関連性についても検討を加え, いささかの知見をえたので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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