アブストラクト(16巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 同所性同種心臓移植の実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 朴順京, 林田健男
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部附属病院分院外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 16
Number : 9
Page : 905-921
Year/Month : 1968 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第I章 緒言」 近年いろいろな臓器の移植手技, 移植免疫, 免疫抑制法, 臓器保存などに関する研究が多く報告され, その発展はめざましい. 欠損せる, あるいは罹患せる臓器を他の個体の臓器で置換するという臓器移植の発想はすでに古く13世紀にあつた8). しかし医学としての臓器移植の歴史は1905年Carrel9)の報告に始り, 心臓移植の歴史もここに始まつた. 1933年Mannら37)が頚部への異所性心臓移植を報告して以来, その移植手技・生着判定・機能追跡の容易なこと, および移植に生じた形態学的変化が心電図に反映すること等により多くの追試がなされ, 移植心の機能, 代謝, 保存, 免疫抑制などに関しての研究が報告されている. 異所性移植はこれらの研究に有用であるが, 心臓本来の役割である循環維持作用に関与しない為, 同所性移植と異なる態度をとることが予想され, また手技的には臨床に応用できない. しかし同所性移植は, 移植操作中, 循環遮断を余儀なくされるので低体温法あるいは人工心肺装置の発展に俟たねばならなかつた. 1953年Neptune48)が21~24℃の低体温下に心肺合併移植を行なつたのが最初の同所性移植とされ, 6時間の生存を得た. 1960年Lower and Shumway33)34)は人工心肺装置使用下に移植を行ない, 最長21日の生存を得, その後もさらに長期の生存を得た. 1965年Kondoら26)27)28)は17~19℃の低体温下に仔犬を用いて同所性移植を行ない, 免疫抑制剤を使用せずに213日の生存例を得た. その他にも多くの報告があるが, 未だ成功例は少ない18)20)58)59). また腎移植では1967年1月現在40)1,200例近くの臨床例があるのに比して心臓移植ではHardy19)の異種移植1例があるのみで, これも1時間で機能を停止し, 心臓移植臨床応用の困難なことを思わせた. しかし1967年末以来, 南アフリカ, 米国において数例の同種移植が相次で行なわれてより俄かに注目を浴び, 基礎実験のなお一層の充実が望まれる現状にある. 著者は, 近藤の方法30)にならない, 超低体温下循環遮断による仔犬を用いての同所性同種心臓移植の実験を行ない, 移植手技, 術後経過, 移植心の機能, 病理組織学的所見, 拒否反応およびその抑制法, 血清酵素の変動について検索した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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