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「いとぐち」 高圧酸素法（Hyperbaric Oxygenation, 以下HBO）の效果の理解, またその臨床応用の可能性は, その異常環境における生体の生理的変化を解明することによつて, 初めて可能となる. その一環として, 血中, とくに動脈血中の酵素増量については, はじめ, もっとも重要視され, 次第に明らかになるところがあり, この血中酸素増量が, HBOの生体におよぼす諸效果の源として考えられて来た. しかし一方, この増量した酸素を局所に運搬する循環動態は, 単位時間内に組織への実質的酸素供給の上に, とくに重要であり, その意味で, この血中酸素増量と局所血流量は, HBOの效果に関して, あたかも車の両輪のごとき関係といえよう. しかし, 実際的には, この局所血流量の測定が困難であり, とくに高圧酸素投与下では, その困難性が倍加するため, 従来この方面の報告は, きわめて少なく, わずかに, 脳血流量1)2), 腎血流量3), 前腕血流量4), 心搏出量5)の報告が見られるのみである. しかし, これらの研究は, 個々の血流量について, 異なつた実験条件で行なわれたため, それぞれの血流量変化に相関性があるのか, 個々の測定した組織に特有のものであるのか不明であつた. しかも, この変化は, HBOの效果に関して, 根本的に重要である点に鑑み, この方面の研究を行なつた. すなわち, 現在, きわめて正確に局所血流量を測定可能になつて来た電磁流量計を応用して, 心搏出量（上行大動脈）, 鎖骨下動脈, 頚動脈, 腎動脈の血流量を, 同時, かつ連続的に測定して, その変化を観察した. さらに, 局所に到達, 消費される酸素量の総和として, 酸素消費量を測定して, 心搏出量と動脈血中酵素増量の間の関係を裏附けることとした. |
