Abstract : |
「I 緒言」合成代用血管の開発に伴って, 血管外科は飛躍的に進歩したが, 静脈系に関しては, 未だ満足すべき成績は得られず未解決の点が多い. これは静脈系の特異的性状である低血圧, 低流量, 静脈壁の性状, 静脈血の特殊性から早期に血栓閉塞を生じ, 晩期では周囲組織の瘢痕化に伴う外圧閉塞を生じ易いことが障害になる. 実験的には自家静脈片で可成り良好な成績を示すことがSchauble32), De Weese33), Bower2)高橋らによって報告され, 臨床的にも時に応用されているが, 大静脈系が対象となることが多いので採取部位などにも制約され, 必らずしも満足な静脈片が得られない. これに対してDe Bakey(1960), Moore42)(1958)らの自家動脈移植, Emerson10)(1958)の同種動脈移植, あるいはGerbode40)(1954)の同種静脈移植の実験的研究がある. 一方, Daniel7)(1952)がteflonを静脈移植に初めて使用して以来, 種々の高分子材料が多くの研究者によって実験されて来たが, Edwards19)(1959), Moore19)(1960)らによってteflonの優秀性が確認された. しかし臨床的に長期観察を行なった報告は極めて少なく, 静脈系に対する移植の困難性が伺われる. |