Abstract : |
「第I章 緒言」肺循環は肺動脈および肺静脈により構成される肺血管床と, これに血液をおくりこむ右心と, そこから血液を送りだす左心機能により調節されている. したがってそのいずれの部分に変動を生じても肺循環障害は現われうる. かかる肺循環障害は肺組織の各面に多種多様の変化を呈しているが, 先天性心疾患では, 左→右短絡の結果生じる肺血流増加による量負荷と, 正常肺動脈に比しはるかに高い左心系の圧にさらされる圧負荷による因子が, 1957年にHalmagyi1), Wood2)に1958年に, Fowler3), Dexter4)らにより報告されている. 一方後天性心疾患では, 僧帽弁狭窄症(MSと略す)については1949年からMoschcowitz5), Edwards6), Wood7)らにより, 左心房圧および肺静脈圧上昇による肺血管への逆圧効果による因子があげられている. また一方, 左→右短絡を有する疾患でも, 心房中隔欠損症(A.S.D と略す)は心室中隔欠損症(V.S.D. と略す)および動脈管開存症(PDAと略す)と肺循環障害の様態が異なり, この原因は, ASDでは肺血流量増加による肺胞毛細血管領域に抵抗を生じ長い年月を径て障害を生じ, 一方VSDおよびPDAでは正常な肺動脈に較べはるかに高い左心圧あるいは大動脈圧に常時暴露されているため肺動脈圧上昇, ひいては肺胞領域の抵抗を生じ組織学的変化を生じるとされている4)8). |