Abstract : |
「I. 緒言」近年心臓外科の発展にともなってその適応範囲も著しく拡大されたが, 手術適応の決定や予後の判定などについてはいまだ解明されていない点も多い. いうまでもなく心疾患における重症度の臨床的評価法として最も重要なものは心肺機能検査である. 手術前後の諸心肺機能については, Clowes1), Riley2)らにより多く述べられているが, いまだ十分とはいえない. とくに近時, 肺高血圧症をともなった症例の手術成績がとくに後天性心疾患について不良であるという臨床的事実から, 肺高血圧症の成因, 病態生理の究明および手術適応の判定, 手術手技の選択などが外科の立場から重要視されている. しかし, 肺高血圧症をともなう諸心疾患における病態生理の究明に際し, 左心機能方面からの追究は案外少ないようである. 著者は, 左心室機能の病態生理を具体的に把握する1つの方法として, 左心室容量の計測を行なった. その方法には, 心血管造影法や稀釈法などがある. 心血管造影法にはDodge5), Arvidsson4)らにより改良, 確立された. 本邦では上田5), 瀬在6)らにより紹介されたが, その研究報告も少ないようである. |