Abstract : |
「緒言」心臓外科の手術前後治療においてしめるジギタリス療法の意義の重要性については今更贅言を要しない. しかしながら, 近年体外循環下開心術の発展と普及にともない, 主として臨床経験的な立場から, 術前および術直後におけるジギタリス投与がかえつて心筋の異常反応, とくに不整脈の発現を誘発するという可能性が諸家6)12)23)25)によつて指摘されるようになり, そのことから手術の直前後期におけるジギタリス投与を禁忌とみなす論者22)も現われるにいたつた. このような可能性が事実ありとすれば, それは体外循環操作あるいは心筋に対する手術侵襲自体が心筋のジギタリス耐容度に対して何らかの影響をおよぼす結果によるものと考えられるが, 果してかかる現象が開心術後において恒常的に招来されるものかどうか, また, その1次的原因がどこにあるかといつた疑問については現在までのところ, 全く明らかにされていない. 著者は以下に述べるような方法を用いて臨床的ならびに実験的に心臓外科とくに体外循環下開心術の前後におけるジギタリス耐容度の変動の実態とその原因について追求し, 若干の知見を得たので報告する. |