アブストラクト(17巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌の術前照射に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 河野宏, 香月秀雄
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部肺癌研究施設第1臨床部門
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 8
Page : 895-915
Year/Month : 1969 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「緒言」癌の治療の主軸を占めるものが外科的療法にあることは現在においても大部分の臓器癌において変りのないことである. そしてその治療成績と称せらるるものは外科的療法すなわち切除の行なわれたものの予後であり, その治療成績の不良である原因は手術によつて根治の出来ないすなわち肺癌の完全な切除が出来ない非早期癌であつたということが癌の治療にたずさわるものの通念であつた. しかも癌の治療にたずさわるものといえば, 大部分が外科医であり一部に放射線医が癌治療の驥尾に付していたというのが遠くない過去の癌治療の現状であつた. したがつて外科的療法で根治の期待できる早期癌の発見にあらゆる努力が傾けられ, その成果も漸次上つてきたことも事実である. 一部の臓器癌, たとえば乳癌, 子宮癌といつたものでは, その治療成績も5年生存率75%内外という飛躍的な向上を示すに至つた. しかしここでこれらの臓器癌の治療成績が向上した原因を早期癌の頻度が高くなつたこと, あるいは手術々式の向上といつた面だけで理解することはできない. これらの治療に放射線の併用といつたことが甚だ大きな力を貸していることに考えをおよぼすべきであろう. 近年における放射線療法の進歩は一部の臓器癌においては外科的療法の主役の座を奪つたことも事実である. 肺癌がその治療成績を上げるために, 診断面の開発に努力をかけその成績も着々と上げられているのに何故わが国ばかりでなく先達である欧米諸国においても良好な成績を上げ得ないでいるかを考えねばならない(表1). 香月2)は肺癌の外科的療法の不良であることの原因を遠隔転移殊に血行性転移の頻度の高いこと, しかもその血行性転移は癌腫の小さな, 局所の進展もほとんどみられない, いわゆる根治手術例と思われるものにさえ術後2乃至3年と長期にわたつて転移の発現がみられることを指摘し, どのように厳格な根治手術の基準をもうけても現在の時点では外科的に癌腫を完全に切除することの困難なこと, これを外科的療法だけでその治療成績を飛躍的に向上させることは甚だ困難であると述べている. 何故切除例が術後長期にわたつて血行性転移の発現になやまされ, それが遠隔予後に大きな影響を与えているかということは, 癌腫の進展の甚だしい末期癌は別として, 根本的には癌腫の発生あるいは増殖進展という基本的問題が解決されない限り根本的な対策を立てることはおそらく不可能であろう. しかし現実の問題としてわれわれがこれに対処する方策を立てなければならないことも事実である. 著者は肺癌の外科的療法に対する放射線療法の併用という問題をとりあげとくに肺門から縦隔に進展する所属リンパ系路に対する対策を放射線併用療法の重点として臨床的所見ならびに病理学的所見を検討しさらにこれらの成績に対する動物実験の裏付けを行なつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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