アブストラクト(17巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺移植の実験的研究 特に移植肺保存に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 氏家喜久夫, 瀬田孝一
Authors(kana) :
Organization : 岩手医科大学外科学第1講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 8
Page : 940-955
Year/Month : 1969 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「緒言」臓器移植の研究は, 最近各分野において積極的に行なわれている. 肺移植もその実験的研究が盛んに行なわれ, 臨床応用の試みもすでに2, 3見られるに至つた1)~5). 肺移植における主なる問題点は, 移植の手技, 免疫反応抑制法, 移植肺入手法および移植肺保存法などである. 移植手技については, 1950年Staudacher6), 1951年Juvenelle7)らの自家肺移植が報告されて以来多くの研究がある8)9). また最近同種肺移植の長期生存例の報告もBlumenstock10)らによりなされ, 本邦においてもその報告が見られるようになり11)~15), 手技的には解決された感がある. 免疫抑制法に関してはMethotrexate, Imuranおよび副腎皮質ホルモンの投与, あるいはX線照射, 交叉輸血などにより著効を呈するという報告が見られるが, 確定的な抑制法は樹立されていない. もう1つの問題点である潅流保存法については報告例が少なく, また移植前後の機能的検索は充分に行なわれていない. 移植肺は剔出後直ちに移植するのが最も生理的, かつ機能的であることはいうまでもないが, 剔出-移植の同時性を得ることは, 臨床上では技術的に可能な場合は少ない. ここに剔出肺の機能保持を目的とした長時間の保存が必要となる. さらに従来行なわれてきた同種移植の実験的研究は, 移植肺を生体より得るものであるが, 実際に臨床応用をする場合移植肺の入手が極めて困難である. このためにはCadaver肺の利用が考慮されるが, これについての潅流および保存法の研究は非常に少ない. 移植肺の保存に関しては, 1962年Blumenstock16)らは, 剔出肺の冷却潅流を行ない, これを移植して良好な結果を得たと報告しているが, その機能の推移の検索はなされていない. かかる観点より剔出肺の潅流保存法ならびにその機能的許容限界を究明するために, 一定条件の下に潅流保存した移植肺の変化を組織学的に検索を行なつた. また最近肺表面活性物質(Pulmonary Surfactant)の研究が行なわれてきたが17)18)19), その方向からも潅流肺の機能を検討し, さらに保存肺の同種移植成績の結果よりLiving肺, Cadaver肺それぞれの保存肺機能再現性を究明し, 若干の知見を得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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