アブストラクト(17巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 単純超低体温法の麻酔管理法に関する研究とくに心電図学的所見を中心にして 第I編
Subtitle : 原著
Authors : 斎藤一彦*,**, 岡村宏*, 瀬田孝一**
Authors(kana) :
Organization : *岩手医科大学麻酔学教室, **岩手医科大学第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 10
Page : 1120-1131
Year/Month : 1969 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I 緒言」 直視下心臓内手術を行なうための管理法として, 全身低体温法と人工心肺による体外循環法とがあるが, 表面冷却による全身低体温法はいろいろの理由で一般的にはまつたく否定的で, 世界の大勢は主として体外循環法に頼つているのが現状である. この体外循環法も人工心肺装置の改良により著しい進歩をとげ, 現在では時間的制限を余り受けず長時間の開心術が行なえるにいたつたとはいえ, 一面ますます高価で複雑化し, 大量の血液, 熟練した多数の人員を必要とするほか, やはり血液が体外に導かれ複雑な装置を通過するために, 血液成分に変化を生じ, 溶血, 塞栓とうの合併症や, その他いろいろの不利な影響を術後におよぼすなど, 問題点も多く, とくに普及化という面では困難が多い. 一方低体温法は比較的簡単に行ない得, 侵襲が少く, より生理的であると考えられるが, 一般的には麻酔および冷却, 加温に長時間を要する他, 30℃以下になると心室細動が発生し易くなる事, また病態生理にも不明な点が多く安全性が少いとして, せいぜい体温30℃, 血流遮断8分前後が利用できる限界とされ, したがつて適用疾患にも制限を受けている現状であつた. しかしながら他方では低体温法のかかる限界は主として現在の麻酔管理法によつて現れたもので, その改良によつては, 体温下降に伴う代謝の低下という低体温本来の理論上の利点が活用できる筈であるとの考えより, 渡辺, 岡村1)~5)らにより麻酔管理法の検討がなされ, Ether深麻酔法により20℃以下までの超低体温法の可能性が実験的に示されるにいたつた. この理論による麻酔管理法はさらに岡村, 著者6)~8)らによつて独自の発展をとげ, 一層安定した麻酔管理法, すなわち自律神経遮断剤併用によるEtherの深麻酔管理法が確立され, 臨床的にも岡村, 新津, 著者8)~16)らにより, すでに約400例の開心術に適用され, 優秀な成績を修めるにいたつた. この麻酔管理法の確立により, 麻酔管理時間の驚異的な短縮がなされ, 血流遮断時間も1時間以上が確実となり, しかも手軽に容易に実施し得るにいたり, ようやく開心術も一般の手術なみにどこでも実施できる段階となり, 今また各地で追試され, 再び低体温法が再認識されるにいたつている. この当大学の超低体温法研究の一環として, 著者はとくに患者管理上Monitorとして最も簡便で, しかも重要な心電図所見を中心に, また血圧, 脈拍とうの一般状態の観察をあわせて, 超低体温法の麻酔管理上の問題点を追求して, 上記臨床成績向上の基盤となつたとともに, 今後の発展に重要な指針となると思われるいろいろの新知見を得たので報告する. なお著者らは表面冷却による全身低体温法を, 体外循環利用による超低体温法に対して単純低体温法とし, 体温25℃以下の場合は単純超低体温法と称している.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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