アブストラクト(17巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道吻合における各種縫合法の実験的検討
Subtitle : 特掲
Authors : 藤塚立夫, 林田健男
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部附属病院分院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 11
Page : 1141-1166
Year/Month : 1969 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第I章 緒言」 1913年Torek1)2)による食道癌切除の最初の成功にはじまる食道噴門癌の外科的療法は, 麻酔の進歩, 各種抗生物質の開発, 術後管理の向上, 術後照射の併用, 分割手術の採用などによりその根治性を次第に高め, 胸腔内食道吻合による食道再建も一般に行なわれるようになり諸家によるすぐれた業績の報告も少くない. しかし, 胸腔内食道吻合に関しては, ひとたび吻合不全を惹起すればその多くは致命的であり, その頻度は施設により, 術者により異るにしても, 一般にはなお, ある程度の危惧感が残されているのが現況であろうと思われる. 食道吻合が他の消化管吻合に比して不利な点としては, 1)患者の多くが高令者でありかつ通過障害を伴つており栄養状態の悪いこと, 2)一期的手術に際しては廓清操作, 胸腔内への挙上臓器の授動操作などに相当の労力を要すること, 3)吻合部位に常に呼吸, 心拍動, 蠕動などの動揺がくわわること, 4)食道自体が漿膜を欠き脆弱であることなどがあげられている. 現在, 一般に行なわれている食道吻合に際しての縫合法はCzerny-Lembert, あるいはAlbert-Lembert法を祖とする標準的な内飜二層縫合のようである. 又, Swenson3), 内山4)らによる三層縫合の報合も認められるが, いずれもLembert5)によつて導入された漿膜面または外層の一期的接合の概念をそのまま応用したものと言える. 古典的な消化管縫合についての概説的な記載はSenn6)によつてなされている. このSennによる1893年までの腸縫合の歴史的推移を見ると, Lembertによる漿膜面の一期的接合の概念を主流としながらもすでにHalsted7)8)によつて強靭は線維組織層として粘膜下層の存在を重要視する考え方が認められ, また, 紹介されている各種縫合法には現在尚独自の縫合法として発表され続けている各種縫合法の胚芽を見出すことができる. 以後現在までの消化管吻合の主流はAlbert-LembertまたはCzerny-Lembert型の内飜二層縫合であるが, 最近になつて胃腸管縫合に際して技術的な単純化を求めた一層縫合および, 断端の一期的接合を期待した一層および二層縫合などが発表されており, 消化管吻合の再検討期に入りつつあるようである. 食道吻合に際しての縫合法についてはなお内飜二層縫合が圧倒的に慣用されているが, その簡便化を目的としたPeterson9)の金属縫合器, Murphy10)のボタンの改良型と云えるBoerema11)の吻合器, 大同の方法とうも発表されている. 食道吻合の安全性, 確実性向上のためにはまずもつて豊富な経験と手術手技の練磨が必要なことは当然であるが, ひとつにはこれまで行なわれてきた各種縫合法を実験的ないし分析的に再評価し, その結果から各種縫合法の特徴を理解することも重要であろう. 著者はこの目的のために従来行なわれてきた肉眼的, 組織学的および物理的な検索手段とともに吻合部の接合度を数量的に表現する方法を考案し, これを用いていささか興味ある結果を得ているので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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