アブストラクト(17巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺移植の実験的ならびに臨床的研究(とくに移植肺のdenervationについて)
Subtitle : 原著
Authors : 伊藤元明, 篠井金吾, 牧野惟義, 早田義博
Authors(kana) :
Organization : 東京医科大学外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 11
Page : 1167-1185
Year/Month : 1969 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 肺移植の実験的研究は1947年Demikov21)が最初に犬下葉同種移植を行ない7日間の生存例を報告したことに始る. 次いで1950年にStaudacher65)が自家肺葉再移植実験を, またMetras52)は同種移植実験, とくに上下肺静脈を別個に吻合しないで肺静脈の左心房流入部で吻合する方法を考案したが, これは今日広くおこなわれているatrial cuffとして肺静脈を吻合する方法の基礎を築いた. 1951年Juvenelle42)は右肺全葉再移植を行ない, 初めて6カ月以上の長期生存例を報告したが, 1952年Davis20)は同種移植を行ない, その不成功の原因を免疫学的関与であろうと述べている. 1955年来, Lanari47)48)49), Hardin27), らは, 多くの同種肺移植実験の結果より, 免疫学的拒絶反応のために同種移植肺が生着しないことを見出し, 同種肺移植においても一般の同種臓器移植の場合と同様に移植免疫の問題を解決することが成功の鍵を握つていることを明らかにした. 免疫抑制法に関しては種々な方法が試みられているが, まず免疫抑制剤についてはBlumenstock4)5)が初めてMethotrexateが同種肺移植に有効であることを確認した. またBucherl13)14)は同腹犬同志の移植では移植肺の生着が延長することを観察した. さらに, 1962年にBlumenstock15)17)は, レ線照射と骨髄移植ならびにdonor血の輸血が同種移植肺の生前延長に有効であることを報告した. また, Hechtman31)はdonorとrecipientの間で体外交差循環を行なつた後に同種移植を行なつたが不成功に終つている. 一方移植手技の完成と共に, 移植肺が術後どの程度の機能を保持するかについても検討が加えられるようになり, Webb77), Howard37), Blanco3), Nigro57)58)らは同種移植肺は勿論, 自家移植肺であつても術後機能低下をきたすことを報告した. 1961年以降, 肺移植への関心は急激に昂まり, とくに移植肺の機能の検討と, 同種移植肺生着延長への工夫の二点に研究が集中されるようになつた53)54)78)36)24)71)72)75). すなわち, Bucherl15)~19)は移植肺の機能におよぼす因子を追求し, さらに, Faber23), Nigro56), Limberg50), Ellison22), Yeh79), Alican1), Hardy29), 広瀬32), 辻73),およびBlumenstock4)5)らは, とくに一側肺再移植後反対側肺動脈結紮ならびに対側肺摘除犬あるいは両側肺移植について検討した結果, 移植肺のみでも生存し得ることを示した. またReemtsma61), Nigro56)57)は, 移植肺の機能は時間の経過と共に, 次第に正常値近くまで回復することを報告した. しかし, Webb77), Lower51)は心肺同時移植を行ない, 完全なdenervationのため長期生存は得られなかつたと述べている. 一方Haglin25)はbaboomと成大の再移植実験を行ない両者を比較した結果, 前者の方が移植肺の機能低下が低く, このことにより動物の種類によつて肺移植に伴う肺denervationの影響が異るのではないかと推定した. 以上のように肺移植の研究は移植手技に始まり移植肺の機能低下をきたす因子, 免疫抑制法の検討等に重点を置いて実験が進められてきたが, 1963年Hardy30)が最初の臨床例を報告するにおよんで臨床応用への第1歩を踏出すに至つた. 著者は, 1962年に肺移植の研究に着手して以来, 自家肺再移植ならびに同種肺移植犬について移植肺の機能と機能低下におよぼす諸因子, とくに肺denervationの影響を生理学ならびに形態学面より検索すると共に肺移植臨床例についても検討を加えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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