Abstract : |
「第I章 緒言」 開心術を行なう手段として人工心肺装置による体外循環法が臨床に供せられてから十数年, その間の発展はめざましく, 今日では数時間におよぶ潅流も不可能ではなくなつている. しかし本法では, 血液は本来非生理的な回路を通過し, 非生理的な状態で酸素付加を受けるものであるから, 長時間にわたると血液成分は相当に破壊変性を被るものと考えられ, それによつて惹起される不快な生体反応は懸念されるところである. 著者はその1つとして体外循環による血漿蛋白の変性をとりあげた. 体外循環による血漿蛋白変性に関しては, 1961年Leeら1)のinterfacial denaturationによる主としてlipoproteinの変性についての詳細な報告がある. その後Wrightら2)のやや否定的な報告もみられるが, lipoproteinが界面の影響を受けて変性を受けやすいことは想像され46), その結果多量のfree lipidが生ずるとすれば, これは不溶性のものであり, 本来蛋白に坦われているべきものであつて問題となるであろう. 著者はlipoproteinを中心として, 血液の直接酸素付加による血漿蛋白変性とその意義について検索をおこなつた. |