アブストラクト(17巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 虚血性心疾患の外科治療法に関する実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 松本博志, 三枝正裕
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 11
Page : 1201-1223
Year/Month : 1969 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I. 緒言」 虚血性心疾患の外科治療は近年長足の進歩をとげた心臓血管外科のうちでも最も早くより着手され, 種々の治療法が考案されながら十分な効果をあげ得ず, 決定的な手術治療法とならないままに消え去ることの繰り返しであつた. もともと虚血性心疾患は, 心筋の酸素需要と冠状動脈を介しての酸素供給との不均衡により生じるものであるが, これは虚血状態はあるが冠状動脈の閉塞, 心筋壊死を伴わない狭心症と, 冠状動脈の閉塞, 心筋壊死に至る心筋硬塞とがあり, 後者では新谷1)によれば, 急性期では1週間以内に7.7%, 1カ月以内に16%が死亡し, また発作後8年以内に50%が死亡の転機をとるとされている. しかもこの疾患の罹患者が社会的にも活動に期待のかけられている中高年者に多いことを考えれば, 救命的治療法の確立が望まれるわけである. 内科的治療法にも大きな進歩がみられてきてはいるものの, なお姑息的であり, より本質に近づいた外科的治療法の開発が望まれている. これまで行なわれた外科治療法の中でも, 内胸動脈植込み術はなお未解決の問題はあるが現在臨床的に応用され, すぐれた効果をあげている. この術式は1945年Vineberg2)により実験的に研究され, 1950年臨床的に応用された. その初期にはその効果を疑問視するものも多かつたが現在では多数の人々によつて実験的にも臨床的にも追試されるに至つている. これは選択的冠状動脈造影法の進歩によつて, 冠状動脈についての知見が得られ, また内胸動脈植込み後も選択的内胸動脈造影法により, 植込み動脈の開存と吻合形成とが証明されるようになつて再び脚光をあびるに至つたものである. Vineberg手術の原法は, 左心室壁で心尖より1~2cm離れた部位の心筋内にトンネルを作り, この中を遊離した左内胸動脈をくぐらせ, トンネル内にある部分の肋間動脈断端は開放しておく方法であるが, Vineberg2)によれば12日目頃より植込み血管から吻合技ができ始め, 3~6週後に冠状動脈との吻合が完成するとしている. 吻合の完成する機序はなお不明であるが, 内胸動脈からの血液は心筋内のSinusoidに入り, Arteriosinusoidal Branchを介してArterioleに入るものであると考えられている. 著者はVineberg手術において血管の植込み前後の血行動態および植込み後から吻合形成までの血行動態の変化, およびこれが心筋細胞代謝にいかなる関係をもつかについて実験的研究を行ない, 若干の新知見を得たのでその結果について報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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