アブストラクト(17巻5号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 先天性心疾患のベクトル心電図学的研究
Subtitle : 特別掲載
Authors : 杉本圭士郎, 瀬田孝一
Authors(kana) :
Organization : 岩手医科大学外科学第1講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 5
Page : 629-649
Year/Month : 1969 / 5
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「緒言」心臓外科の手術手技, 術後管理の確立とうの技術の進歩により, 先天性心疾患の成績は飛躍的に発展をとげている. ために手術の対象となる先天性心疾患の術前の確実なる診断が一層重要な問題として取り上げられている. その心臓外科における診断法として種々挙げられるが, なかでもScalar心電図(以下心電図と略す)は先天性心疾患において, ルーチンな診断法の1つとしてその奇形の種類の鑑別, また重症度判定に利用され, 日常欠かすことのできない検査法であり, すでに内外をとわず, 数多くの研究報告がなされている. また近年ベクトル心電図の発達, ならびに研究に伴い, より一層心疾患の診断に貢献するところが大となつている. 先天性心疾患に関するベクトル心電図の研究も最近多く報告され, あらゆる面から検討され, 心電図では論及し得ないような血行動態との関連性, 手術適応の可否とか, その効果の判定について種々論じられている. Braunwald1)2)3)4)らは先天性心疾患の心電図とベクトル心電図とを比較検討し, 心室肥大の診断にあたつて, ベクトル心電図が優れていることを指摘し, Lasser5)らは先天性心疾患で心電図上rsR'波を示すものは, ベクトル心電図では右室肥大を正常例にみられるrsR'波では右室肥大を示さないと述べ, またLasser6)は幼児で心電図上, 右胸部誘導V1で高いR波を示すとき, これが右室肥大のためか否かを決定するのにベクトル心電図が有効であると述べている. Allenstein7), Wolff8)らは剖検例と心電図, およびベクトル心電図とをそれぞれ比較検討した結果, 全体的にベクトル心電図のほうが信頼性がおけると述べている. 以上のごとくベクトル心電図は心起電力を立体的(Magnitude, 大きさ), (Direction, 方向), (Polarity, 極性)に把握する点において従来の心電図と異なる点であり, また優れた点ともいえる. 最近のように先天性心疾患に対する外科的治療が進歩するにつれ, さきにも触れたごとく, より一層確実なる術前診断, 手術適応の可否, その治療効果の判定にベクトル心電図のはたす役割も大きく, したがつて正確をきわめる必要があり, ベクトル心電図がどこまでそれらを反映するかを検討する必要性が生ずる. 従来の先天性心疾患に関するベクトル心電図の報告は臨床的に診断され, 血行動態との相関についての症例が多く扱われ, 手術所見との対比についての報告はきわめて少ない. 著者は以上の観点から当教室で, 超低体温麻酔により直視下根治手術を施行した先天性心疾患, すなわち心房中隔欠損症, 心室中隔欠損症では欠損孔径, Fallot四徴症, 肺動脈狭窄症では肺動脈狭窄の解剖学的状態, さらに肺動脈狭窄症は, その中隔欠損の有無, 右室収縮期圧の状態によりベクトル心電図学的検索を行ない, 若干の知見を得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ