アブストラクト(17巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 急性心筋硬塞の治療に関する実験的研究(Balloon catheterによる断続的上行大動脈急速加圧法およびその治療効果の検討)
Subtitle : 原著
Authors : 岸一夫, 榊原仟
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 6
Page : 743-756
Year/Month : 1969 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I. 緒言」 虚血性心疾患は近年わが国においても急速な増加の傾向を示し1), その治療面でもC.C.U.などの救急治療システムの出現2)3), Vinberg氏手術を中心とした外科的治療の発達4)~6), および, その他補助循環の研究などがある. 本症には急死の例が多く, とくに急性心筋硬塞症の場合は, その大半を占めるといつて過言ではない. 急性心筋硬塞の死亡原因を大別すると, (1)重篤な不整脈(1)心室細動または心停止. 2)A-Vブロックを含むその他の不整脈). (2)心原性ショック. (3)心不全などである. 心室細動に対しては, 電気的除細動法がある. この除細動率は非常に高いとされているが, 中には除細動困難なもの, あるいは不可能なものもあり, また一度除細動されても, すぐ再発をくり返すことも少なくないことも事実である. A-Vブロックにはやはり電気的pace makingが主役をなす. 急性心筋硬塞による心不全, 心原性ショックはとくに死亡率高く, この面の治療の研究は将来の課題の1つとなつている. 狭心症および心筋硬塞の一般的治療原則は大別して2つの考えから成立している. その1つは冠血流量を積極的に増加させようとする方法で, 他は心仕事量そのものを軽減させ, 心筋酸素消費量を減少させることにより, 比較的虚血状態改善をはかる方法7)である. 後述する急性心筋硬塞による心室細動発生にしても, 冠血流量減少率, すなわち虚血部あるいは硬塞の範囲の大なることがその最大の誘因とされている. また, 心筋硬塞による心原性ショック, 心不全についても, ほゞ同様のことがいえる. したがつて急性心筋硬塞の治療としては, まず第一に速かに冠血流, とくに虚血部の血流改善をはかることが必要である. 一般心不全に対して内科的治療の他に補助循環法が行なわれ, その研究は多数あるが, 心筋硬塞例においては従来の補助循環法よりも, むしろそれに加うるに冠循環補助に重点を置いた冠補助循環なるものが必要であり, この1つにcounter pulsationによるdiastoric augmentation8)~13)がある. この方法のねらいとするところは左室の負荷をとるとともに, 冠循環の補助を行なうことにある. これより以前にも冠潅流圧を上昇させて冠血流量の増加をはかるために, 上行大動脈に軽度狭窄作成法の実験的研究がある14)~16). 著者はこの両者のものとは異つた方法で急性心筋硬塞治療のための冠潅流圧急速加圧による冠循環補助法を考案した. そして本法の冠動脈左廻旋枝起始部結紮による死亡率, および左前下行枝結紮による虚血部に対する直接効果について検討を行い新知見を得, 臨床例にも応用して好結果を得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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