アブストラクト(17巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌の術前照射による気管支上皮細胞の変化について
Subtitle : 原著
Authors : 大塚俊通, 香月秀雄
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部肺癌研究施設臨床部門
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 7
Page : 836-849
Year/Month : 1969 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「緒言」近年, 肺癌のみならず他臓器癌においても早期発見, 早期治療が唱えられ, 組織的な集団検診による摘発が行なわれつつある. 同時に早期発見のための診断方法の開発, 改良があり, 肺癌においては気管支鏡におけるOptic Fiber ScopeからFlexible Fiber Scope1)の開発, 細胞診においては被検材料の採取方法といつた面から気管支擦過法の改良2)3)4)がある. 一方治療面においても放射線療法が飛躍的な進歩をとげ, また化学療法も比較的信頼度の高い薬剤の登場をみるに至り, 手術手技の向上と相侯つて治療成績も向上の傾向を示している. しかし肺癌の治療において, なお放射線療法, 化学療法が単独療法として期待されるには治療対象の大部分が病期の進行したものである現状においては困難であり, その治療成績を向上させるためには, やはり外科的療法が主役を演ずることは否定できない. 勿論外科的療法に限界があることも事実であり, したがつて手術と他の併用療法が今日の重要な問題とされ, とくに放射線療法との併用については進行癌に対する手術適応の拡大, および手術後の転移, 再発防止といつた治療成績の向上を目的としての術前照射が行なわれるようになつてきた. 肺癌の術前照射に関してはBromley(1955)5), Paulson(1962)6), Baker(1963)7)Faber(1963)8)等の研究報告があり, わが国においても金田(1956)9)が術前照射の有効性を提唱して以来, 昭和38年頃より肺癌の術前照射に関する研究10)11)12)13)14)15)16)17)18)19)20)21)22)が見られ, またその方式についての検討がなされている. 放射線療法において, 癌腫の照射による効果は組織型により異り, 単純癌が強く反応を示し, 扁平上皮癌, 腺癌の順としれている. しかし同じ組織型の肺癌においても, 同量の放射線を照射した場合, 癌腫の反応が同一でないことは一般に知られている事実である. したがつて肺癌の放射線療法による照射効果の判定は主にX線所見の推移によつて行なわれてきた. 最近放射線照射による癌細胞の変性を指標として, その変性所見を剥離細胞学的に検索し, 照射効果の判定を行なうとする研究23)24)25)26)27)が行なわれている. しかし喀痰により検索される癌細胞は元来が変性の進んだものが多く, 放射線照射による変性過程をとらえることが非常に困難である. 著者は昭和39年4月より, 60Coの術前照射を行なつた肺癌例について, 気管支擦過物を被検証として癌細胞の変性所見と癌腫の照射効果との関連について検索を行なつてきた. この場合喀痰と異なり, 気管支擦過法により採取された癌細胞は変性も少なく判定が比較的正確であるという所見を知ることができた. しかし, この場合にも中枢気管支発生のものは擦過による癌細胞の採取が容易であるが, 末梢発生の肺癌では常に癌細胞の採取が可能であるとはいえず, そこにまた1つの弱点がある. たまたまこの検索過程において, 正常気管支上皮の放射線による変化の程度が同一線量においても症例により異る点に気付いた. そこで正常気管支上皮細胞の照射による変性過程を追求することにより, 癌腫に対する照射効果を推定することが可能ではないかと考え, 気管支擦過物, および切除肺における正常気管支上皮細胞の照射による変化と, 癌腫の照射効果との関連について検索を行なつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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