アブストラクト(17巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺移植の実験的研究とくに移植肺の血行動態に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 鈴木正人, 瀬田孝一
Authors(kana) :
Organization : 岩手医科大学医学部外科学第1講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 17
Number : 7
Page : 879-893
Year/Month : 1969 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「緒言」疾病や外傷によりその機能が廃絶した器官を健全な組織で置換し, 生命の維持, 延長をはかることは長い間人類の念願であつた. この目的のために臓器移植の研究が古くから数多くなされてきており, すでに同種腎移植が臨床に応用され, その成功例の報告もある. 一方, 肺腫瘍や重症肺結核などにより肺切除の適応にありながら, 肺機能の予備能力に乏しいために手術を断念せざるを得ないことや, また肺気腫, 肺線維症, 高度の両側気管支拡張症や心疾患による不可逆性肺血管病変などのごとく, 現在まだ治療法のない肺疾患では肺移植によつて解決できることもあると考えられる. 肺移植の実験的研究は1950年Staudacher1)らによる犬での自家肺葉移植および同種肺葉移植の試みが初めて発表されて以来, Metras2), Junevelle3), Lanari4), Davis5), Neptune6)らの移植実験があるがいずれも短時日間の生存例しか得られなかつた. さらにHardinとKittle7)(1954年)は左肺自家移植犬で対側肺全剔除を行ない, 移植肺のみで数日間の生存犬を得た. このHardin7) らの実験により肺移植の可能性が示唆された. しかしながら同種肺移植では免疫反応による移植肺の拒絶現象という問題があり, 同種肺移植は行なわれていたが, 長期生存はなかつた. 1960年ころよりこの拒絶機講を抑制するために全身レントゲン照射, ステロイドホルモン剤の投与, 供給者と受納者間の交叉輸血や種々の代謝拮抗剤などが応用された. Blumenstock(1961年)8)9)らは葉酸拮抗剤であるAmethoptrin(Methotrexate)を, Hardyら10)はAzathioprine(Imuran)を用いて飛躍的な移植成績の向上を報告した. 以上の実験的研究に加えて1963年Hardyら11)によつてはじめて臨床での肺同種移植が発表され, ついで欧米ではMagovern13), Posner14)らが本邦では篠井(1963年)15)16)らがさらに翌年辻ら17)も同種肺移植の臨床例を報告しており, 人間での肺同種移植の可能性がとりあげられた. しかし, 肺はそれ自身複雑な機能を有する器官であつて, 肺手術後の合併症も多岐にわたり, 一たん合併症が発生すれば致命的となることが多く, 人間における肺移植が一般的となるためにはまだ究明すべき課題が残されている. また肺の移植が受納者の体内で生着し, しかも長期間にわたつて肺機能を十分にはたしていなければならない. 自家移植肺や同種移植肺の機能についてはYeh18), Bucherl19)20), Reemtsma21)らによつて研究されており移植肺の酵素および炭酸ガス交換能が論ぜられているが一致した見解が得られていない. そこで, 著者は自家および同種肺移植を行ない. 肺機能を主に移植肺の血行動態の観点から検討しいささかの知見を得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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