Abstract : |
「第I編 高令者心房中隔欠損症」 第1章 緒言 心房二次中隔欠損症(ASD)は, 中年以後の先天性心疾患の中で, 最もしばしばみられる疾患で, 比較的予後の良いものである. ASDは現在では, 心臓外科の中でも, 最も安全な手術の1つとなり, 手術の適応も拡大されている. 中, 高令者のASDにも手術が行なわれ, 諸家より良好な結果が発表されている1)~10). 本疾患の予後は, 比較的良好なものであるが, その平均寿命は, 40才前後とされている. すなわちRoesler11)は36才, Burrettら12)は37才, Welchらは13), 47才, Cosbyら14)は49才, Campbellらは39才, Davidson15)は36.8才と述べている. しかしながらASDのあるものは, 70才~80才まで生存し, 天寿をまつとうする場合も報告されている16)17)18)19). 高令者ASDに対しては, 以上の如き点を考慮し, 手術の適応を決めなければならない. 著者はここに, 高令者ASDの手術例と非手術例をとりあげ, 種々なる検討を加えた. かかる研究は少なく, とくに自然予後と高令者ASDの手術についての文献はまれであり, また日本人を対称にした報告については未だみない. 著者はとくに, その手術と手術適応を中心に報告する. |