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「第1章 緒言」 食道外科の進歩に伴い, 食道癌の一期的手術は, 今日広く行なわれるようになり, 秀れた成績も少くないが, 腹腔内消化管手術に較べれば, 未だその手術死亡は高率であり, 縫合不全, 循環障害, 肺合併症が三大死因に挙げられる1). 中でも縫合不全は, 直接手術手技の失敗に基づく場合が多く, 根治術後早期に患者を失うことは, 食道外科を志す者にとつて堪え難い苦痛である. 食道癌手術の普遍化が必要とされる今日, 胸腔内吻合後の縫合不全, 吻合部狭窄に対する危惧は, 一般にはなお重大な問題の1つであり, 合理的, 容易, かつ確実な吻合法の探究が望まれるが, 現在, この方面に関する系統的研究は少く, 外科医の関心は, 専ら手術手技の練磨に向けられる傾向にある. 著者は, 胸腔内に適した吻合手技の改善を目的として, 現行各種の手縫い吻合法に検討を加え, 胸腔内に適した合理的な吻合法を究明すると共に, その安全性, 確実性向上のために, 市販接着剤「アロンアルフア」を再検討し, 食道吻合における利用価値について, 興味ある知見を得ているので報告する. なお各種手縫い吻合法の基礎的検討は, 東大分院外科食道班の共同研究として行なわれたものであり, これを中心とした著者の見解を整理した. |
