アブストラクト(18巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 短絡性心疾患におけるRI稀釈曲線の研究-とくに術前, 術後の変化ならびに手術成績との関連性について-
Subtitle : 原著
Authors : 川田志明, 赤倉一郎
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学医学部外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 2
Page : 121-134
Year/Month : 1970 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I 緒言」 指示薬稀釈(indicator dilution)法は各種indicatorの開発により, 臨床的に多方面に応用されているが, とりわけ心臓外科の分野においては, 手術前後に迅速なデーターを提供し, 循環動態の分析, 手術効果の評価に極めて有力な手段となつてきている. 近時, 種々の色素を用いた色素稀釈(dye dilution)法とともに, radioisotope(R.I)を利用したR.I稀釈法1)~8)が心拍出量, 循環時間の測定, さらにすすんで心内短絡の診断にも応用されている. 心内短絡の診断には, 従来, 酸素飽和度測定法, 心血管造影法が主に用いられてきたが, 色素9)~12), Radioisotope13)~17), Inert gas18)~20), アスコルビン酸21)22), および生食水などを用いた指示薬稀釈法がこれに加えられた. RI法はGoldring24), Greenspan13)らが心内短絡の検出に有効なことを報告して以来, 先天性心疾患の診断に応用されてきた. 心臓部, 肺野および頚部にscintillation detectorを指向し, 末梢静脈よりRIを注入すると, 心臓, 肺, 末梢動脈を通過する際発するγ線をdetectorがとらえ, それぞれの部位での時間・濃度曲線をうることができる. 心臓部では右心, ついで左心の流れをとらえた2峰性の曲線となり, 肺野では肺血流のみをとらえて単峰性の曲線を生じ, 頚部では肺循環, 左心系を通過したのち頚動脈に出現してはじめて曲線が得られる. 曲線の下降脚はおのおの急峻で対数的減衰を示す. しかし, 短絡例では短絡の程度に応じて下降脚に変形をきたし, 逆短絡例では頚部曲線の出現時間が短縮するなどの特徴がみられる. 現在, 慶大心臓血管外科グループにおいては, 術前, 心カテーテル法, 心血管造影法に先立つてRI曲線を記録して以後の精検の指針としている. 直視下心手術に際しては, 体外循環開始の直前および終了時に, 色素曲線を描記し, 修復の完全なることを確認ののち, 手術を終えることとしている. 手術後は遠隔時に再びRI法を繰返す. 臨床所見などから問題の残る症例については, 術後急性期にあつても必要に応じて反復検査し, その治療方針決定に役立て適確な術後管理の一助としている. 以上の要領で, 短絡性心疾患の手術前後にRI稀釈曲線を記録し, 下降脚の変化, 右左時間の推移を中心に検討し, 手術成績の評価を試みた. また後天性心疾患のRI曲線について, 2, 3の特徴的所見を得たので, 短絡性心疾患の曲線との差異についてもあわせて報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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