アブストラクト(18巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌の経気管支転移様式についての病理組織学的研究
Subtitle : 原著
Authors : 前田昌純, 岩本熙, 門田康正, 中原数也, 木村謙太郎, 正岡昭, 曲直部寿夫
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 2
Page : 148-159
Year/Month : 1970 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I はじめに」 肺癌の治療をめざす際, 外科医に与えられている責務は局所の根治にあり, これを全うし得る必要条件は癌腫の局在性にあるといえよう. しかしながら, occult metastasisを適確に検出し得る手段をもたない現行では, 時には, 術後思わぬ癌腫が残存し, また, 期せずして根治を期待しながら, すでに局在性の失われた症例を切除する可能性もありうる. そのため一定頻度の再発は免れ得ない. Rasmussen(1964)42)の剖検成績によれば, 腫瘍死の84%(54/64)に局所所再発, 69%(44/64)に遠隔転移が証明されており, 局所再発は, やはり無視し得ない頻度に存在する, しかも, そのうち31%(20/64)は局所再発のみで遠隔転移が証明されなかつたという成績は, 手術の方法如何で根治率がさらに改善し得ることを意味しており注目に値する. 一口に局所再発といつてもその機作はさまざまであるが, 現在最も関心がはらわれているのは肺門, 縦隔の転移リンパ節といえる6)7)16)23)32)33)34)36)45). そのため, “根治的”という表現がリンパ節転移の完全廓清と同義語的に用いられており, それを重視するあまり, 術後肺門に残存する癌腫, またそれに伴う気管支断端の切除工夫については無関心にすごされて来たきらいがある. 肺癌が気管支粘膜側に沿い浸潤することはよく知られている. その場合, 癌巣より気管支切断端までの距離をもつて気管支切除時の安全限界のよりどころとされているが, 一方, 肉眼的に正常とみえる気管支壁内に, 腫瘍から全く離れて転移を形成する症例の報告がある38)41)51). もちろんこのような転移が局所再発といかに結びつくかを結論づけるためには, 転移巣の運命ともいうべき問題がone cushionとして残されているのはいうまでもない. しかしRabin(1952)41)がparacarinal biopsyで見出したような組織levelの小転移巣がどれほどの頻度に実在し, いかなる虚血に基づくかは, まず検討すべき事柄であろう. ここに経気管支転移の系統的な研究という課題が求められる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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