アブストラクト(18巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 横隔膜ヘルニアに関する実験的研究
Subtitle : 特掲
Authors : 桜井凱彦, 斉藤昊, 片岡一朗
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 3
Page : 167-182
Year/Month : 1970 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I 緒言」 横隔膜ヘルニアはJackel(1964)1)によると, 1579年Ambroise Pareが初めてその剖検例を報告し, 1874年Lichtenstemが臨床診断の第1例を報じたが, その後はX線診断の普及発達につれて報告例は次第に増加し, 1935年Schoenはその報告例数2,000に達すると称している. Walkerが手術成功例を1889年に報告し, その歴史は古い. 横隔膜は主として呼吸器, 循環器に関与している臓器で, 先天性では胎生期発生上の横隔膜形成異常による欠損, 裂孔, 後天性には外傷による破裂などが起ると, 腹部臓器の胸腔内脱出による胸腔内臓器の圧迫, また脱出臓器自体の障害のため重篤な症状を呈することが多い. したがつて新生児期における本症の死亡率はきわめて高く, 植田(1964)2)は新生児期に心臓大血管の圧迫が少なかつたために危篤症状を現わさないで生存し得るのは約10%としているし, Hedblom(1931)3), Arnheim(1952)4)は放置すれば1カ月以内に75%が死亡すると述べている. またGreenwald(1929)5)は30例中13例が生後1時間以内に, 9例が24時間以内に死亡し, 残りの6例(20%)が診断および治療を受けているといつている. 新生児に対する手術成績も予後不良なことが多く, Snyder(1964)6)は生後72時間以内に手術を受けたものの36%は不成功で, 本症の実に50%が死亡したとし, Johnson(1967)7)は47%の死亡率を報告している. Tolis(1953)8)Gross(1958)9)のごとく90~95%の治癒率を報告しているものもいる. その手術時期については, 患側肺に形成不全がある6)7)8)10)11)ものが多いため早期手術を推奨しない者もいるが12), Gross(1946)13)は生後24~48時間以内に手術を行なうのが最上で, 7日~10日を経過したものは予後が悪いと述べ, Roe(1956)12)は剖検例から患側肺に無気肺の所見はなく, 圧迫をとれば直ちに再膨脹してゆく可能性を述べ, 早期発見, 早期手術の必要性を述べている. 手術方法についても異論が多く, Sauerbruch(1925)14)は病巣への到達が易く, 脱出臓器に癒着がある場合には剥離が容易であること, また横隔膜神経捻除術を施行することによりヘルニア門の閉鎖が容易であることなどから開胸術を推奨し, Kleinschmidt(1930)15)は手術侵襲が軽度で, 脱出臓器の整復が容易であるからと開腹術を推め, Landoris(1930)16)は手術野が広く, 手術操作が完全に行なえるので開胸開腹術が良いとし, またヘルニア裂孔, ことに巨大裂孔の場合の閉鎖方法についても種々の方法が述べられるなど手術方法についての文献はきわめて多いが, 横隔膜ヘルニアが呼吸器系におよぼす影響の研究についての報告はほとんどない. そこで私は横隔膜ヘルニアの場合, ことに横隔膜巨大孔における各種閉鎖法の呼吸器, 循環器におよぼす影響について実験し, いささかの新知見をえたので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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