アブストラクト(18巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 希釈体外循環後の体液分布の実験的研究
Subtitle : 特掲
Authors : 荒井康温, 榊原仟
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 3
Page : 183-201
Year/Month : 1970 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 心臓疾患に対する外科的治療は近年その診断法の進歩と相侯つて, ますます適応が拡大されそれに伴い開心術症例数も莫大な数をみるにいたつた. それ故体外循環方式も幾多の研究, 変遷を経てきたが, 体外循環は非生理的な状態であり, したがつて幾つかの問題点が指摘されている. その1つに生化学的な問題として, 正常とは異つた血液分布状態を呈すること, すなわち循環系からの脱落が挙げられ, その改善策の1つとして, 希釈体外循環法の開発がなされた. 林1), 田中2)3)らは全血回転において, 流量の多寡とその脱落量に平衡関係を見出し, この脱落した血液量が体外循環停止後, 循環系に復帰することを証明し, 脱落量の多いもの程復帰する量も大であるという結果を得た. 岩本4)は各種希釈体外循環を全血回転と比較し, 循環血液系からの脱落量の差異を求めたが, 潅流液の種類により異なり, 5%糖液および低分子デキストラン液にその量が少いことを発表した. 外科手術後の体液変動に関しては幾多の文献をみるが5)~9), 大手術では術直後細胞外液量の減少も大きく, 単なる出血による損失のみならず(extravascular sequestration), 組織内への再吸収という問題がからみ(internal redistribution), それが手術の軽重と関係するといわれており, 術後第1病日頃より抗利尿ホルモンの活動性も峠を越え, 循環血液量, 細胞外液量も増加し, 2週間以内で正常に復すると記戴されている. 一方体外循環時にも血液分布状態の変動のみならず, 体液分布状態にも変化を来たすことが予測される. 体外循環時およびその後の体液分布が如何なる状況にあるかについての検討研究は少く10)~12), その状態によつては体外循環法および希釈法を考慮しなくてはならない. とくに長時間体外循環の際にはこの問題が重要な事柄となり得る. Gadboys13)~16), Litwak17)らは循環血液量と赤血球量とは同程度に変動しないことを指摘し, 二之宮18), 黒田19)らも循環赤血球量より循環血漿量の減少の方が目立つことを述べている. したがつて体外循環後の体液変動を検討することは, 術後の輸血と補液のbalanceを考慮する上に重要なことと考えられる. 著者は田中, 岩本の研究法にしたがつて実験を行ない, 循環血液量と血管外細胞外液量を検討しかつ同時に血漿浸透圧を測定し, 全血使用例と希釈例とについて比較した. 循環血液量測定に当つては従来赤血球をNa2Cr51O4で標識し測定し, 血漿はT-1824にて測定したが, 本実験に当つてはI131-fibrinogenを用いてVolemetronにて測定した. これらの成績については既に1964年8月第1回アジア輸血学会, 第13回日本輸血学会総会20)に発表した. その後長嶋21), 武内22), 呉23)らの発表がありその他には著者が調べ得た範囲内においては斯くのごとき方法により論じた文献は内外に見当らず, 2, 3の知見を得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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