アブストラクト(18巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 間歇的Counterpulsation法-実験的心筋硬塞に対する治療効果-
Subtitle : 特掲
Authors : 横須賀達也
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 6
Page : 519-536
Year/Month : 1970 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 急性心筋硬塞症の死亡率は30~40%に達し死亡原因の約半数は不整脈によつて, 他の半数は循環不全によつて占められるといわれる1~4). これらのうち, 不整脈による死亡は, 薬剤療法, 電気刺激療法の進歩, Coronary care unit(C.C.U)の開設などによつて近年大巾に減少したが3)5), それにもかかわらず急性心筋硬塞症の予後は予期したほどには改善されていない. その理由は, 循環不全による死亡数の相対的増加にある5)と考えられる. 一般に, 重症不整脈と循環不全はover lapする傾向にある. 極言すれば, 不整脈は循環不全の一症状にすぎない. ために, C.C.Uにおいて不整脈の治療が劇的に成功しても, 背後にある循環不全によつてその大部分は死亡する結果となる. 循環不全にたいする治療法が確立されない限り, 心筋硬塞症の予後は究極的には改善されない. 心筋硬塞にもとずく急性循環不全の本態は言うまでもなく心筋の部分的壊死によるポンプ失調である. したがつて本質的には治癒しうる性質のものであるが, 次にのべる理由によつて自然治癒機転は妨害される. 1)側副血行路形成を促がす2つの因子(虚血部の発生と冠動脈間の圧差)が相互に矛盾すること. 2)壊死の進行と, 側副血行路形成に要する時間のずれ. 3)心臓が常時, 仕事を営む臓器であること. 壊死部の発生は血圧の低下をもたらし, 血圧の低下によつて壊死部はさらに拡大し, このようにして短時間内に悪循環が形成される. 悪循環の形成こそは, 心筋硬塞における急性循環不全の特徴であつて, 心筋硬塞症の予後を不良にしている最大の理由である. 死亡の大部分が発病早期に偏つている5)事実はよくこれを裏付けるものであろう. 治療の根本方針は, 1)心機能を維持し, 適正な末梢循環を確保すること. 2)人為的に自然治癒環境を強化すること, にある. 従来, 心筋増力剤, 昇圧剤などがほとんど唯一の治療手段であつたが, これら薬剤によつて心機能を強化することは, 故障したポンプを無理に回転させるに似て, その効果にはおのずから限度がある. 同時に, 酸素需要が供給を上廻る冠動脈疾患にあつて, 心筋を過負荷の状態におくことは, 心筋虚血の拡大を意味し合理的な方法ではない. 心筋破裂の危険もある. このように考えると, 薬剤による治療には所詮, 一時的な効果を期待しうるにすぎない. 事実, 循環不全, なかんづく心原性ショックを伴う心筋硬塞の予後はきわめて不良である. 残された治療の可能性は補助循環法6)にあると考えられる. 機械によつて心機能を補助し, 拡張期動脈圧を選択的に高めて, 心筋に過負荷を興えることなく冠血流量を増す方法は理想にかなうものと考えられる. 以上のような理論に基き, 著者は虚血性心疾患の治療法としての補助循環法を研究してきたが, 本論文ではCounterpulsation法(以下C-Pと略す7~10))について, 冠血流量を有効に増加させるポンプ駆動法として, 間歇的C-P法(Intermittent Counterpulsation Method ICPM)の有意性を提唱し, 従来のC-P法と比較しながら, 冠循環に与える効果, 末梢循環におよぼす影響, 実験的心筋硬塞にたいする治療効果などについてのべたい.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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