アブストラクト(18巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Myocardial Revascularizationに関する実験的研究-内胸動脈心筋内植え込み術および胸部下行大動脈・心筋間血管移植術における病理組織学的検索を中心として-
Subtitle : 原著
Authors : 木曽康裕, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 6
Page : 546-563
Year/Month : 1970 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 冠動脈疾患による死亡者の数は, 近年増加の一途をたどつており, しかも中年以上の男性が犠牲となる場合が圧倒的に多いので, 重大な社会問題となりつつあるといつても過言ではない. 本疾患に対する治療法は, 冠拡張剤, 抗凝固剤, さらに抗コレステロール剤などを用いる内科的療法のみでは, 冠動脈に既存している閉塞や病変の修復が不可能なため, おのずと限界があり, 積極的な外科的治療の出現が切望されるのである. 1916年Jonnesco1)により狭心症に対し頚部交感神経節切除術が施行され, 1933年Blumgartら2)は甲状腺剔出術を行なつて狭心痛および心臓負荷を軽減せしめようとした. これらの方法は本質的にはいずれも血行改善に寄与せず, 今日では歴史的興味であるにすぎない. しかしこれに端を発し, 以来多くの術式が考案され, 試みられて来た. 本疾患の本態は, 冠動脈硬化による心筋の乏血状態であるので, 手術はいかにして虚血部に動脈血を供給するかという点にしぼられよう. したがつて, 術式としては, 冠動脈病変部に直接手術操作を加えて冠動脈血流の改善を計ろうとする直接法と, 冠動脈とは別のルートから副血行路を増生せしめようとする間接法, の2つに大別される. 前者の直接法は, 冠動脈硬化症による狭窄部位が左右起始部附近に主として局在しているという事実3)~7)から発しており, 冠動脈閉塞部を切除し, あとに端々吻合か血管移植を行なつて再開通をはかるもので, 術式としては閉塞冠動脈切除術8), 冠動脈血栓内膜切除術thrombo-endoarterectomy9~11)およびpatch graft法12)13), 系統動脈-冠動脈吻合術14)などがみられる. 本法を施行する際には低体温法と体外循環とを併用するなどの工夫15)~17)がなされてきたが, なお技術的に困難性があると, 臨床上対象となる症例が限られている点に問題が多いといえる. 他方, 間接法は, 1935年Beck19)が有茎胸筋を心筋に直接縫着する方法を最初に試みて以来, 大綱(O'Shaughnessy20)), 肺葉(Lezins21), Carter22), Harken23), 麻田24)25)), および心膜(Thompson26), Beck27))とらを心筋に縫着せしめて, 乏血状態にある心筋の血行改善を計ろうとする, いわゆるmyocardial revascularizationの術式が相次いで考案実施されるに至つた. しかし, 画期的と思われる術式は, 1946年Vineberg28)が報告した内胸動脈心筋内植え込み術といえる. これは左内胸動脈を左室前壁内に植え込む方法で, 元来冠動脈系は心筋内で豊富なnetworkを形成しているため, 出血している内胸動脈を心筋内へ植え込んでも, そこに血腫をつくることなく乏血部へ吸収され, いわゆるmammary to coronary artery anastomosisが完成されるというアイデアである. 当初, このVineberg手術は殆んで顧みられなかつたのであるが, 1962年, Vinebergによつて7年前に手術された症例の植え込まれた内胸動脈がなおも開存し, 動脈血を心筋に供給している事実がSones29)の選択的冠動脈造影法により立証されて以来, 広く一般に追試され, 現在多くの臨床例がえられるようになつた. またこの心筋内に系統動脈を植え込むという概念から, 自家血管を利用する変法(Baird30), Diethrich54~56), Pifarre31), Ferlic32), Garret33), 麻田34))が考案され, 試みられている. 著者は, 実験的に犬において虚血心を作成し, 内胸動脈心筋内植え込み術, およびその変法として著者が考案した新鮮自家動脈ならびに新鮮自家静脈を用いる胸部下行大動脈・心筋間血管移植術を試み, これらの術式について, 主として病理組織学的な見地から検討を加え, 以下の知見をえたので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ