Abstract : |
「第I章 緒言」 現在, 食道癌の外科的治療に対する合併療法として, 放射線療法が盛んに行なわれるようになり, また放射線技術および放射線治療装置の発達に伴いさらに外科的治療効果も増大している. 1968年3月までに慶大外科で取扱った食道癌総症例346例中, 非照射194例のうち切除できたもの85例, 術前照射を行なつたもの152例, うち切除例104例と非照射群43.8%に比して, 照射群は68.4%と切除率も向上しさらに5年生存率においても, 非照射例13.6%より照射例25%と向上している1). 術前照射療法の治療効果については光学顕微鏡的に種々の検討が成されている8)9)18)19)20). しかし放射線が細胞のどの部分に, 如何なる影響を与え, その結果として, 癌細胞が如何に崩壊して行くかについての充分な検討は行なわれていない. そこで著者は癌細胞個々について電子顕微鏡的にその状態を観察すれば細胞に対する放射線の影響を追求することが可能ではないかという考えから, 対照として正常食道上皮の電顕的検討も併せ行ない, 放射線が食道癌細胞に与える興味ある知見を得たので報告する. |