アブストラクト(18巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部疾患における経皮穿刺診断法の開発に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 東郷利夫, 早田義博
Authors(kana) :
Organization : 東京医科大学外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 11
Page : 1006-1023
Year/Month : 1970 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第I章 緒言」 近年悪性腫瘍に対する診断ならびに治療技術の向上は目覚ましいものがあるが, 治療後の予後をみると, いまだに不良な面も少くない. 外科療法を行なうに当つて, 完全な治療効果を望むためには, まず腫瘍が局所性の状態にあること, すなわち転移の無いことはいうにおよばず, 周囲組織臓器に進展していないいわゆる早期のものであることが第一条件である. 肺癌においても同じことが云え, 早期発見, 早期診断および早期治療が当然望まれるが, 肺はその臓器の特殊性からみて, 早期に血行性またはリンパ行性に転移がみられるものが少くなく, その治療成績として5年生存率をみても内外共に20~40%と低率である1)2)3)4). この肺癌治療向上の一対策として小型癌の発見があり, その1つとして肺癌の集団検診が行なわれ5), 小型癌例が増加し, それにともない小型癌に対する確定診断法の開発が望まれてきつつある. 従来の小型肺癌に対する確定診断法をみると, 於保によれば小型肺癌84例中64.3%が術前確定診断が得られたのみで, 他の35.7%は手術によつて初めて確定されたもので, 小型肺癌の確定診断の困難性を指摘している. しかし小型癌でも腫瘍の発生部位によつて難易性はあり, 主葉気管支に発生した症例では, 気管支鏡, 喀痰細胞診および病巣擦過により全例診断が確定され, 極めて良い成績を示している. 一方末梢気管支発生例では62.5%に診断が不能であつたとしていることから, 小型肺癌の中でも末梢気管支発生例の診断法の確立が必要である. そのため多くの者によつて種々な開発が行なわれているが, その1つとして池田の開発したFlexible Bronchofiberscopeが最近注目を浴び, 従来の硬性気管支鏡に比してその可視範囲も亜区域, 亜々区域気管支まで拡大され, 診断率も向上してきた. しかしそれより末梢気管支に発生した症例に対しては喀痰細胞診は陽性率が著しく低いことから, 選択的病巣擦過法が研究され, 坪井, 服部らにより高率な陽性率がえられている. しかしこれらの気管支鏡, 喀痰細胞診, 病巣擦過法を用いてもなお末梢小型肺癌で診断不能例が少なくない. これは現在の経気管支検査法の限界であり, このため病巣擦過法でも到達しがたい部位の肺癌や極めて末梢に発生した胸膜直下のものに対して経皮的に行なういわゆるPercutaneous Needle Biopsyの価値が再認識されてきた. 本邦では優秀な穿刺針がないこと, および合併症の危険性の危惧などからかえりみられなかつたが, 最近その価値について再考慮が払らわれつつある. 著者は本法の診断的価値を検討すべく, 安全に使用でき, かつ確実に細胞を採取しうる穿刺針を考案し, 原発性肺癌, 転移性肺腫瘍, 肺化膿症, 肺結核, 肺良性腫瘍および従隔腫瘍などに使用し, 本法を各種診断法と比較検討し, とくに末梢肺癌に対する診断的価値に検討を加えた. さらに本法によつて採取された細胞と喀痰および病巣擦過法によつて採取された細胞を形態学的に比較検討し, 細胞形態から, 組織型の判定の可能性について研究を加えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ