アブストラクト(18巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環の実験的ならびに臨床的研究(とくに溶血防止剤の効果について)
Subtitle : 原著
Authors : 神代弘道, 古賀道弘
Authors(kana) :
Organization : 久留米大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 12
Page : 1067-1083
Year/Month : 1970 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第I章 緒言」 人工心肺装置による直視下心臓内手術の研究は1937年Gibbonにより始まり, 1953年彼ははじめて心房中隔欠損症の直視下根治手術に成功した. その後Kirklin1)は1956年にGibbon Typeの人工心肺を用い, またLillehei2)は1956年に独自の気泡型人工心肺を用いて多数の手術例を報告した. 本邦では1956年曲直部3), 榊原4)らが人工心肺による直視下手術に成功して以来諸家の報告が続いた. また装置の改良, 潅流技術の向上, 体外循環の病態生理の解明, 潅流液の研究などにより比較的長時間の体外循環も安全に行なわれるようになつた. しかしながら体外循環は現在でもなお完成されたものとはいい難く, 非生理的循環であり, 手術適応の拡大にはより一層生理的な循環が必要である. 大量輸血によつて生じるHomologous blood syndrome5), 血清肝炎6)7), Sludging8)9)などの問題があり, 1961年以来血液の節減, 輸血後肝炎の予防, 末梢血行動態の改善などを目的としてZuhdiら10)11)12), ついでLillehei13)14)らは人工心肺を5%ブドウ糖あるいは低分子量デキストラン15)で充填すると同時に小型の酸素化装置に熱交換器を内臓し, 中等度低体温下に多数の臨床例にすぐれた成績を報告した. 最近では稀釈体外循環が行なわれるようになり74)76)99)100)101), さらにすすんで無血充填体外循環が行なわれ94)97)98)102)103), 好成績をあげている. 長時間体外循環の際に不快な合併症の1つとして溶血現象の発生があり, 田口20), 砂田16), Doberneck17), Hirore18), Yeh19), 三枝90)らの報告にもみられるごとく, 術後の急性腎不全をはじめとして, 出血傾向21), 肺合併症22)などの発生があり, 手術成績を左右する重大な要因として注目されている. 体外循環に際しての溶血発生因子としては, 人工心1)23)24)および人工肺25)26)などの装置によるものおよび心嚢内貯留血27)などが要因とされている. 溶血防止にはMannitol16)20)28)65)やその他91)の報告があるが, 宮内らはPluronic F-68が溶血防止に有効であることを報告している. そこで著者は久留米大学第2外科で行なつている体外循環により生じる溶血現象につき検討し, ついで溶血軽減の点から, 溶血防止剤の効果につき検討したので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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