アブストラクト(18巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環によって惹起される肺微細胞構造の変化に関する研究-術後臨床経過との関連性を含めて
Subtitle : 原著
Authors : 山口真弘, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 12
Page : 1084-1101
Year/Month : 1970 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I 緒言」 1953年Gibbon1)は初めて人工心肺を用いて心房中隔欠損症の手術に成功を収めたが, 以来, 体外循環による開心術の後に, 時折重篤な肺合併症, いわゆるpostperfusion lung syndromeがみられることがDodrill2), Muller3), Kolff4), Osborn5), Tilney6), Baer7)らにより報告された. Gibbon8)は, 体外循環による開心術後の死因の最も多くを占めるものは肺機能不全であると報告し, またDodrill2)は体外循環後には15~25%の高率で肺合併症がみられたと報告した. 最近10年間における心臓外科の目覚しい進歩によつて, 体外循環後にみられる肺合併症の発生は著しく減少したが, 一方現在では, 従来適応外とされていたような複雑な心疾患が手術の対象となり, 体外循環時間の延長が要求されるようになつたため, 今日においてもなお, 開心術後の肺合併症, とくにpostperfusion lungの予防は術後管理上の重要な課題と思われる. Postperfusion lungに関する従来の報告は, 開心術後死上例の剖検肺, または動物における体外循環実験後の肺を, 光学顕微鏡的に観察したものであつて, その病理所見を要約すると, 多発性の斑状無気肺, びまん性の肺鬱血, 血管周囲および肺胞内への出血, 肺水腫などである. 近年, 電子顕微鏡による観察が普及するにつれ, 井上9)は動物実験において, 体外循環前後に採取した肺を電子顕微鏡的に観察し, 人工心肺充填液の稀釈度と肺微細構造変化についての関連性を論じ, 森10)は体外循環が施行された心疾患例につき, 体外循環後の肺のblood-air barrier, とくに基底膜の変化を電子顕微鏡的に観察し, これと体外循環前後の肺機能との関係について論じ, 岡村11)も心房中隔欠損症の手術例について, 短時間の体外循環による肺微細構造の変化を電子顕微鏡的に検索し, かなり強い影響が認められるがすべて可逆性の変化であつたと述べているが, 臨尿例において体外循環とくに長時間体外循環前後の肺を, 光学ならびに電子顕微鏡的に比較観察し, 体外循環によつて起こる肺微細構造の変化を追求し, これと術後臨床経過との関連性を論じた報告はみられない. かかる観点から著者は本研究を行なつたのである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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