アブストラクト(18巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後にしばしば見られる重篤な呼吸困難症に対する薬物学的治療
Subtitle : 原著
Authors : 南孝雄, 岩渕汲, 藤田昌雄, 初音嘉一郎*
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学麻酔学教室, *東京女子医科大学心臓血圧研究所
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 12
Page : 1102-1106
Year/Month : 1970 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 開心術後にみられる, いわゆる広義のPost perfusion respiratory distress syndromeが注目されたのは, 1960年の初頭のことである. しかし, 多岐にわたる病態機序の複雑性, 多大なる外科的侵襲の影響をもつて, 未だ, 確立された治療法は見出されることなく, いわゆる症状に応じた治療という消極的な方法に終始していることは遺憾なことである. Post perfusion respiratory distress syndromeの成因に関して, 現在まで報告された文献をひもどくと, 長期体外循環に基づく血清蛋白の変性1), 血液成分に由因2)する肺の広範囲における換気不全, その他, 考え得る成因として, 肺の代謝異常が否定できない現状である. ところで, 開心術と, 呼吸困難症状に特徴とされているものに, Pulmonary Surfactantの減少, もしくは, 消失がある3). この事実は, Pulmonary Surfactantの減少がessentialなもので呼吸困難症状を惹起する場合と, その他の条件, 例えば, Atelectasisらが先行し, 肺胞の界面が消失し, その結果, 界面活性物質であるPulmonary Surfactantが, 存在価値を失つたため, 表面から消失する場合が当然考えられる. 前者の場合は, 肺実質における代謝系路が阻害されない限り起き得ない事実であり, 後者の場合は, 常識的に判断して, 術後しばしは見られる喀痰の不仕末, または, 不必要にBronchus, Alveolusなどを乾燥させたり, Pure Oxygenによるabsorption atelectasisとうによつて惹起され得る可能性がある. Naimark4), 藤原5)らの一連の実験により, 肺がPulmonary Surfactantとしての, 脂質合成の場であるという可能性は, 充分に現実味をおびてきた. Pulmonary Surfactantが, 肺の呼吸運動を左右するものとすれば, そのEnergy sourceとしての一翼を荷う肺におけるMitochondriaの存在も軽視できないであろうが, この点に関しては, 今後検討を加えたい. われわれは, まず肺における脂質代謝の有無を, in vivoならびにin vitroにおいて追求してみた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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