Abstract : |
「はじめに」肺癌の確定診断をうけた症例の予後は, 癌腫全般の中でも非常に不良であり, 幸い手術を施行しえた症例においても, その5年生存率は, 20%内外である1)2)3)4). そして, 肺癌の長期生存例はいずれも, 臨床的早期のものに対して, 根治的切除術を施行しえた症例であり, 腫瘍がたとえ肺内に限局されていても, 胸壁, 縦隔リンパ節などへ転移のみられたものには3年以上の長期生存例は非常にまれである. ところが, 肺癌の確定診断を受けていながら, 手術を施行されていない症例や, 病巣をあきらかに残した姑息的切除例の中において, まれに長期生存例がみられることがあり, 根治的切除以外にまた合併治療としての放射線や抗腫瘍剤の効果以外の治療的因子が考えられる場合もあつて, 癌治療上に興味ある問題を惹起している. 1950年代と, 1960年代の世界の諸家の肺癌手術成績を比較すると, その間, 手術死亡率は13.8±5.9%から, 7.1±3.2%に低下したが, 5年生存率は, 24.7±9.2%から, 24.0±6.9%となると, あまり差をみないとの報告5)がある. |