アブストラクト(18巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : X線像よりみた肺癌の増殖発育に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 船津秀夫, 早田義博
Authors(kana) :
Organization : 東京医科大学外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 7
Page : 622-635
Year/Month : 1970 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 癌の特殊性として, 生体とは別個に自律性をもつた増殖および進展があげられ, 進展の中でも転移が癌が臨床面での病期の全てを決定しているといえる. したがつてその増殖, 進展形態を知ることが癌の実体解明の1つの道である. 肺癌ではX線写真により, 直接癌の陰影を把握でき, その経時的変化を追求しうる特徴がある. また肺の機能および血管およびリンパ管が豊富であるという他の臓器と異つた構造上の特殊性からも, その増殖, 進展の様相を知ることは, 肺癌の実態を把握するのみならず, 診断および治療の面においても重要な課題である. このような見地から最近, 肺癌でのX線像の経時的追跡から, 増殖, 進展形態が注目され. 腫瘍の経時的変化を観察し, 数理にもとずく発育曲線に対する数式が考案され, それについての, いくつかの報告があるが, いずれも数式による仮想, 仮説にとどまり, 実際臨床面で応用しうるものは少く, またその成績も一定していない. その原因として, このような推理はX線写真上の腫瘍の大きさの計測により得られるもので, 細胞単位という精密なるものでなく, その上期の組織像の相異, 分化の程度, 壊死状態, 間質反応の程度, また個体の宿主抵抗性などの因子が関与するため, これらの諸因子を全て満足させるべき理論数式の決定は理論上不可能である. しかしその傾向を知り, 臨床的因子との関係を把握することは, 肺癌臨床にたずさわる者にとり重要かつ必要なことである. このような観点から著者は原発性肺癌肺野腫瘤型のX線写真を経時的に増殖状態を観察できた症例について, 肺癌発生後その増殖が「指数的増殖」の想定のもとに, 腫瘍面積の実測値より, 発育曲線を作製し, 肺癌のX線像上の発育様式の追求と, 年令, 性別, 組織像および外科療法後の予後とうの臨床的因子との関係性のほか, 肺癌の増殖, 進展傾向の実態を解明すべく研究を行なつた. 肺癌に関する報告は本邦23)~41)では篠井, 早田, 石川, 香月, 鈴木, 井上らが, また欧米42)~57)ではOverholt42), Gibbon44), Gifford45), Paulson43), Clagett46)49), Ochsner47), Taylor48)らの臨床および病理組織学的立場からの報告がみられるが, 肺癌の発育速度に関する報告は本邦では富永6)10), 田崎5), 辻本12), 欧米1)~19)ではCollins, Spratt, Otto, Goldman, Weiss, Monaldi, Abbey, Gupta, Henry, Tohnsの報告があるにすぎず, 臨床的因子との関係を検討しているものは少ない.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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