アブストラクト(18巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 人工弁置換術に伴う血栓形成について 基礎的ならびに臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 田中信行, 和田寿郎
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部心臓血管外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 7
Page : 701-715
Year/Month : 1970 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I. 緒言」 リウマチ性, 細菌性心内膜炎による心臓弁膜の高度の変形, 破壊に基づく重症心弁膜症に対する外科治療として人工弁による弁完全置換術は1960年3月Harken1)らが大動脈弁領域に, また同年9月にはStarr2)らが僧帽弁領域にいわゆるcaged ball valveを移植し, 十分な治療効果が期待できることを立証して以来, はじめて実用的な時代を迎えるに至つた. そして前におこなわれたテフロン, ダクロン布を用いるcusp extension方式や, leaflet valveによる弁置換術は3), 術後の弁機能が耐久性において劣るゆえに消退し, 確実に治療効果が期待できるStarr-Edwards弁を中心とするcaged ball valveによる弁置換術が重症心弁膜症に対する外科治療の本命となるに至つた. caged ball valve4)~11)による弁置換術ははじめは, 大動脈弁, 僧帽弁領域にのみおこなわれたが, その後三尖弁領域にも, また同時二弁12)13)14)同時三弁置換術23)24)へと次第に適応が拡大されてきた. またその年令的手術適応も各種サイズの開発により, 成人より小児期23)24)の症例にまで使用可能となつた. その間これらの弁置換術における手術成績, 遠隔成績も報告され4)~11)19)25)~29). 人工弁による弁置換術の妥当性と有用性が強調されてきた. しかし反面人工弁の種々の欠点も指摘されるに至り, つぎつぎと各種の改良された人工弁(図1)が登場してきたがそれらnew typeの人工弁においてすら術後の血行動態25)~29)の著しい改善を示しながらも耐久性47)~50)93), 術後塞栓症30)~41)などの大きな問題が残つており, 現在もなお種々検討されつつある. 著者はこのうち弁置換術後の塞栓症の問題をとりあげ, 雑種犬を用いての動物実験において, stainless steel製の円柱, 同平板をそれぞれ腹部大動脈, 左心房内壁の血流中に露出固定させこれら金属表面に沈着する血栓とその組織化についての様相を移植後2週より1年にわたり観察し, さらに和田教授によつて考察されたWada-Hingeless74~82)弁を用い僧帽弁置換実験をおこない, 術後の血行動態の検索, 人工弁と生体組織との固着, あるいは血栓形成の状態を観察した. 次いで札幌医大胸部外科教室においておこなわれた弁置換術のうち, Starr-Edwards2)13)36)37)64), Smeloff-Cutter20)85)ならびにKay-Shiley弁21)22)による大動脈弁, 僧帽弁の単独弁置換症例の剖検例ならびに再置換症例を対象とし, 人工弁の血流面における組織治癒過程を観察し, これらの症例中, 塞栓症を示したものについての発現機序に関するいささかの知見を得, また現存する代表的な人工弁を置換後の血行動態および血栓形成可能性の面より検討し, いかなる構造の人工弁が最も理想的なものであるかにつき考察を試みた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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