アブストラクト(18巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心臓保存に関する実験的研究-とくに超低温下保存心における生化学的, 病理組織学的, 機能的評価による保存の時間的安全限界の検討-
Subtitle : 原著
Authors : 田中勧, 赤倉一郎
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学医学部外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 8
Page : 762-774
Year/Month : 1970 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 1905年, Alexis Carrel1)に始まる心臓移植の実験は1933年Mann2)による異所性心臓移植手技をへて, 1961年Lower, Shumwayら3)による同所性移植の実験的成功を見るに至つた. 1967年12月以来, Barnard4)に始つた同種心臓移植の臨床応用の結果5)6)7), その手術手技に関してはほぼ完成の域に達したことを示しているといつても過言ではなかろう. したがつて, 心臓移植の分野における残された2つの領域, すなわち, 移植免疫とともに心臓保存の問題が今日の重要な研究課題となつている. 心臓移植のための心臓保存の意義は, 1)提供心獲得から移植までの時間的制限を軽減し, 2)組織適合性判定の時間的余裕を与え, さらに, 3)提供心の移動の簡易化を可能とし, かつ, 4)提供源の秘匿に役立たしめるにある. 従来より, 実験的にいくつかの心臓保存法が研究され, いかにして保存時間を延長し得るかについて, 多くの努力が払われてきた. その主な方法を示すと表1の如くに分類できる. いずれの場合においても, その保存中に心筋の形態学的ならびに生化学的変化は漸次進行し, 一定時間後, 心筋は不可逆性変性を来たし, 蘇生不可能の状態に達する. この心臓保存の許容時間の判定は, 最終的には同所性移植後の生着を以つてすべきであるが, 実験手技上の煩雑さから種々の因子が加わり一定の条件を得難い. したがつて, その判定基準としては再搏動の発現を必須条件とし同時に, 保存心・再搏動心について機能的, 生化学的, 病理学的評価を加えることによつて心筋の不可逆性変性の発現の限界を多方面より検討せねばならない. 著者は心臓保存の基礎的問題として, 主として, 単純超低温保存心を対象とし, 心筋生化学的変化, とくに心筋嫌気性代謝および高エネルギー燐酸結合体の消長を中心として検索し, 同時に心理病理学的変化, 心機能変化との関連性より不可逆性変化の発現の限界を追求し, 総合的判断に基く心臓保存の時間的安全限界の判定を行ない, いささかの結果を得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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