アブストラクト(18巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Vineberg氏法術後の機能的血流の検討ならびに有茎脾片心筋内移植法の実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 新垣朝康, 林田健男
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部附属病院分院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 18
Number : 9
Page : 845-857
Year/Month : 1970 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒論」 虚血性心疾患の外科的治療法には冠動脈狭窄部または閉塞部に直接手術操作を加えて, その部の内膜剥離あるいは血栓除去を行なつたり, 冠動脈と体循環系とを吻合する直接法1)~4)と, 内胸動脈結紮術5)~6), 心膜癒着術7)~8), 体循環系動脈心筋移植法9)および脾移植法10)~13)に代表される間接法とがある. 直接法は, 現在のところ, 手術手技は, かならずしも容易でなく, さらにその適応の決定上, かなりの制限があつて, 一般化されるに至つていない. 一方, 間接法の中でもVineberg氏法9)は, 手術手技が比較的に簡単である上に, 手術侵襲も大きくなく, その上に直接法に較べてその適応が遙かに広く, 術後植込み動脈と冠動脈末梢分技との吻合も高率であることとうから, 世界的に広く行なわれている現況にあり, その効果は臨床および動物実験においても高く評価されている. しかしながら, その効果の程度に関する時間的経過については, 術後4~6週間以後についての検討がほとんどであり, 術直後あるいは早期の効果についての報告は極めて少ない. それらの報告で, 2・3の人々14)は, 植込み3時間後および24時間後の時点でも, 造影剤は心筋内移植血管外に移行するのを認めなかつたと述べており, 一方電磁流量計を用いた報告では術直後より微量ながらも血流があることが述べられており, 未だ確かなことがわかつていない. この手術法を創始したVinebergによれば, 心筋には, sinusoidal structureがある為に術直後から“immediate flow”があるといわれている. “immediate flow”の存否は, この手術法のキーポイントである植込み血管のpatencyを維持する重要な要素である. したがつて, この事を明らかにすることは, この手術法を最も有効なものとするために, 改良発展させる上で極めて大切なことであるといえよう. ところが, この問題に関して報告されたこれまでの研究はほとんど血管造影法や電磁流量計を用いた血行動態面からならされている. 元来, 心筋Revascularizationの効果判定には, 前下行技結紮試験, Back-flow測定法, 色素注入法あるいは電磁流量計による直接血流の測定などがあるが, 真の血流効果を判定するには機能的血液状態を測定することが最も妥当と考えられる. 今日, 機能的血流測定に最も有効と思われる方法は組織ポーラログラフィーによるO2濃度の測定であろう. 心筋ポラログラフィーについては, Sayen以来, 幾つかの報告があるが, その方法の困難の故にまだまだ容易には成績が得られていない. 著者は当教室で永野が改良した心筋用ポーラログラフを用いてこれを測定し, Vineberg氏法直後の血流を検討し, さらにこの点を改良せんとして有茎脾小片心筋内移植法について同様に検討し, 興味ある所見を得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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