アブストラクト(19巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺胞表面活性の研究
Subtitle : 原著
Authors : 岡村永義, 福慶逸郎
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学医学部第1外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 1
Page : 25-48
Year/Month : 1971 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 気-液界面である液体表面の分子には分子間力が不均等に働き, その合力は液体内部へ向う. この力により表面張力が生じ面積を最小にしようとする. さらに溶液では溶質が構造上表面張力を下げるものであれば, 溶液表面に溶質は吸着して溶液内部より濃度が高まり溶液の表面張力を下げる. 肺胞壁の肺胞腔側は全く乾燥した細胞壁が露出しているのではなく, 少なくとも組織液などで湿潤被覆されていると考えられる. この中空状液体では表面張力のために内部圧は外部圧より高くなる. 内側壁の界面のみを考えると圧差PはP=2γ/Rであらわされる. γ=表面張力, R=半径 肺胞の半径を50μ, 表面張力を血漿の50dynes/cmとすると, 圧差は20cmH2Oとなり, 胸腔内陰圧の数cmH2Oに比しかなり大きなものであり, 表面張力のみでも肺胞は閉鎖してしまうはずである. この問題の解決に糸口を与えたのはVon Neergaard1)であり, 彼は摘出肺の圧量関係を空気と液体とで調べ, 前者が高い圧を要するのは表面張力が加わつているためとし, 肺胞表面張力は表面活性剤があるので血漿よりも低いのであろうと推論した. その後Pattle2)は肺割面から圧出した気泡が安定であることから, その表面張力はほとんど零であろうと述べ, Clements3)はmodified Wilhelmy balanceを用いて肺胞表面物質の表面張力が面積変化依存性を持つことを直接示したのである. ここにおいて肺胞表面活性物質の存在および重要性が理論的に明確化され, 以降呼吸生理学の一分野を占め, 各方面からの研究が進められてきている. 一方, 近年の心臓外科の急速な進展に伴い術後合併症として肺機能障害がより重視されるようになつた. その病態生理究明の手段に肺胞表面張力をとりあげ, 表面活性の消長を諸条件下で調べ, 治療応用への示唆を見出すのをこの研究の目的とした.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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