アブストラクト(19巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Travenol型Total body perfusion setによる体外循環の研究(完全無血充填法による開心術)
Subtitle : 原著
Authors : 井出研, 和田達雄
Authors(kana) :
Organization : 横浜市立大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 1
Page : 49-66
Year/Month : 1971 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I はじめに」 開心術は今日では日常の手術として広く行なわれるようになつた. 臨床的に開心術にはじめて成功したのはGibbonによる1953年である1)から, 以来十年余にして飛躍的な進歩をとげたのである. 補助手段としての体外循環の概念はCarrel2)3)らの発想よりおこり, のちのGibbonの人工心肺の研究にまで発展し, 今日の人工心肺装置の基礎を築いたといえる. 現在, 直視下開心術の補助手段として用いられるものに体外循環法と低体温法の二種類がある. その応用と普及, さらに, その発展について体外循環法はことにいちじるしく, 現在の開心術のために多大の役割をはたしてきた. しかし, その装置は複雑な生理状態を完全に代償しなくてはならないものであるために, それ相当の高度の機能を備えたものであるのは当然のことであつて, このことは装置の構造と操作の上にも複雑さが要求されている. 現在の段階ではもつとも完成された型とされているKay-Cross式のdisc oxygenatorではその構造上, 充填液として大量の血液が必要であり, たとえ希釈法を採用してもなお血液を使用せずには体外循環を行ないえない. さらに, このような装置を緊急手術のさいに常備しておくことは一般的なことではない. とくに, 大量の血液を入手することが困難な現在では保存血を充填液の一部に利用するようになつてきてはいるが4)5)6), homologous blood syndromeへの注意がGadboys7)らにより喚起されて以来, 無血充填法がZuhdi8), DeWall9)らによつて行なわれて現在に至り, 本邦でも浅野10)らにより紹介, 研究されていた. この目的のためにも装置内充填液量をできるだけ少なくしたものが望ましく, さらに操作が簡単で緊急手術にも使用しうるものが要求された. 1956年頃よりGott, Lillehei11)12)13)によつてplastic sheet製の酸素化装置が開発され, 臨床的に無血充填法で組み合せて応用したのがCooley14)らである. 著者らは1964年12月より1967年8月まで53例の心疾患患者についてTravenol型disposable oxygenator(Total body perfusion set)を用いて開心術を行ない, 完全無血充填法を併用することにより若干の結果を得たので報告し, あわせて多少の文献的考察を行なつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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