Abstract : |
「I. 緒言」 近年噴門部の癌腫などのために, 食道胃接合部を切除し, かつ長期生存例も多くなるにつれ, その追跡調査中に, 逆流性食道炎の強い患者と, 殆んどない患者とが認められる. 等しく食道胃接合部が切除されているにもかかわらず, 術後の逆流状態が異なるのはなぜか. 著者らは胃内に水負荷を行ない, 食道への逆流状態を動的に検索し, 逆流の生理学的機序を解明し, かつ手術後の逆流防止に応用する目的で, この実験を行なつた. 従来逆流防止機構については, 歴史的に, 1)解剖学的括約筋1), 2)横隔膜のpinch-cock action2)3), 3)腹部食道のvalve action4), 4)His角とsling gastric fiber5), 5)Mucosal rosette6), 6)Phreno esophageal Membrane7), 7)Physiological intrinsic sphincter8)9)等多く研究されてきたが, いまだその逆流防止に対する重要性については, 必ずしも明らかになつたとはいえないのが現状であるが, 著者はとくに重要と考えられる4)および7)を中心に検討を加え, かつ麻酔下における実験状態に対する影響を知るために, 薬物投与下と無麻酔下の状態を比較検討した. |