アブストラクト(19巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 選択的冠動脈造影法の研究-特に虚血性心疾患の冠動脈像および安全性の検討-
Subtitle : 原著
Authors : 渡辺寛, 綿貫重雄
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学大学院医学研究科外科系外科学(I)
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 6
Page : 511-525
Year/Month : 1971 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 虚血性心疾患は未だ日本においては欧米諸国に比し, その頻度は低くはあるが, 近年かなりの増加の傾向がみられており1), さらに今後平均寿命の延長, 食生活その他の生活環境の欧米化に伴い当然その増加は予想される. 諸家の報告によると2)~8)心筋硬塞症の急性期死亡は16%から61%におよび約30%であり, その長期予後は5)~7)11)5年生存率54%~69%, 10年生存率は22%~49%であり, 予後不良なる疾患の1つとしてその治療法は大きな課題となつてきた. 虚血性心疾患の治療は, 内科的にもかなりの成果をあげてきているが, 虚血性心疾患の殆んどが冠動脈のアテローム硬化による閉塞性疾患として発症することより12)13)内科的治療にはおのずと限界が生じてきており積極的なより本質に近づいた外科療法の必要性が強調され, 内胸動脈心筋内移植術14)に代表されるRevascularizationを目的とした間接法に加え, 最近は内胸動脈・冠動脈間吻合術15)や大動脈・冠動脈バイパス法16)などの直接法が行なわれるようになり, 一層冠動脈病変の正確な把握が必要となつてきた. 冠動脈造影の歴史をふりかえつてみると, 1906年Merkel17)が剖検心の冠動脈像を検討したのに始まり, 1933年Rousthoi18)が動物実験にて冠動脈を造影した. 臨床例では1945年Radner19)は経胸骨的に上行大動脈を穿刺し, 大動脈造影と同時に冠動脈像を得たのが最初であり, つづいてJonsson20), Di Guglielmo21)らは逆行性に大動脈起始部にカテーテルを導き, 大動脈注入冠動脈造影を行なつた. さらにDotterら22)のバルーンによる大動脈血流遮断下造影法, Arnulf23), Gensiniら24)のアセチルコリン心拍停止下造影法, Nordenstrom25)の気管支内圧上昇下造影法, Thal26), Richardsら27)の心拍位相同調下造影法, Williams28), Bellman29), Paulm30)らのループ状カテーテル使用による造影法など大動脈起始部に注入された造影剤がより多く冠動脈に流れるような方法が工夫された. しかしいずれの方法も造影剤を大動脈起始部に注入するため, 正確な冠動脈像を鮮明かつ安全に得ることは困難であつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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