アブストラクト(19巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 発生部位別にみた肺癌の増殖様式 第I篇 気管支および肺実質侵襲について
Subtitle : 原著
Authors : 鎗田努, 香月秀雄, 林豊
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部肺癌研究施設
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 7
Page : 559-571
Year/Month : 1971 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「緒言」原発性肺癌は, 他臓器癌に比べて予後の悪い癌腫の1つとされており, 組織学的ならびに生物学的性状からみた, いわゆる悪性度に関し, 諸種の検索が行なわれている4)8)28)29)30)32)37)38)43)51)52)67)69)77)78). 肺癌の病理組織学的分類は現在検索の段階を経て, 日本肺癌学会組織分類委員会の基準15)63)が示されているが, これに含まれているCAT分類, SAT分類, Inf分類も, 臨床的, 病理学的な悪性度の解析に際してはなお多くの問題点を残している. 一方, 肺癌の発生母地に関しては, 肺癌が時に気管支癌の名称で呼ばれるように, 気管支を発生母地の主要部分とする考え方に対し75)61), 終末気管支からさらに肺胞上皮の発癌母地としての関与に重きをおく者もある. また臨床的にも, X線像において末梢肺実質内の腫瘤状陰影を示すものと, 肺門部中枢気管支のもので浸潤性陰影あるいは無気肺像を示す肺癌とでは, その増殖様式あるいは転移の形成機序, 予後などにおいて異なつた成績がみられることも良く知られている. これらの増殖様式, 転移形成機序の上で異なつた性状を示す肺癌が, 肺という1つの臓器系に包含されるという理由から, 一律に同一のものとして取扱われることには大きな疑問がある. 気道と肺実質から形成される肺という1つの臓器系が, たとえば肝などの消化器系の臓器と対比してみた場合, 肝における胆管癌, 肝癌の差異は肺の気道系と肺実質との発生母地の違いという点で関連をもつて考えられてくる. これは発生母地を異にした場合の増殖様式あるいは悪性性格といつた面の差異として当然問題にされねばなるまい. 発生部位から見た肺癌の臨床病理学的, 生物学的諸性状の解明が, 病理組織学的所見の検索に平行してすすめられなければならない理由がここにあり, またこのことが一方逆に発癌母地の相異, 特異性といつたことが解明される手掛りにもなる20)~22)しかしながら病期の進行した肺癌では, その厳密な発生部位の同定について大きな困難さもあつて, この観点に立つた研究は極めて少ない. 近年, 肺癌の外科的療法の進歩に伴つて, 早期の比較的小型肺癌が切除例の対象となる頻度が高くなり, これらの症例には比較的厳密な発生部位の同定が可能となつてきている. 著者は上述の観点にたつて, 発生部位別に, それぞれの組織型別17)に, 肺癌の増殖進展様式を検索し, これらと臨床的悪性度との関連を検討し考察を行なつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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