アブストラクト(19巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 静脈移植の研究-とくに保存同種, 異種血管片の移植成績および異種血管移植犬における血清抗体の証明-
Subtitle : 原著
Authors : 高橋透, 杉江三郎
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 7
Page : 613-632
Year/Month : 1971 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I 緒言」 静脈移植の研究は今世紀の始めCarrelにより初めて試みられた. しかし動脈再建の外科に比べてその臨床的要求度が低いこと, さらにまた再建の成功を阻む数多くの特異性も加わつて, 飛躍的発展をとげた動脈の外科の陰で比較的地味な研究が続けられ, 未だ適確な方法がないまま今日に至つている. 静脈再建, とくに移植における最大の問題点は適切な材質を開発することであり, 従来多くの研究がこれに向けられてきた. かかる目的で現在までに自家血管を始めとする組織材質や, Teflon, Dacronなどの人工材質が種々検討されてきた. 北大第2外科では以前よりこの静脈再建の研究をとり上げ, これらの諸材質について検討を加え, 理想的材質の究明をおこなつてきた. とくに自家静脈片移植では100%の満足すべき開存成績が得られている. しかし実地臨床では適切な径, 長さの自家静脈片を随時入手することは困難であり, その応用は著しく制限されている. その他の組織材質では血管片を除いて, その開存成績は不良であり, また血管片でも新鮮同種, 異種片の成績は必ずしも良好ではない. 静脈移植後の失敗機転としては早期血栓閉塞および晩期狭窄の2点が上げられているが, 著者の教室の従来の研究からもかかる機転には移植片のもつ組織反応性がきわめて大きい因子となつていることが知られている. 最近移植の領域ではとくに移植免疫と関連して組織の処理, 保存が注目され再検討されてきている. 著者は以上の点を勘案して同種および異種血管片を処理, 保存することにより, 新鮮移植片のもつ組織反応性を減弱し, 併せて入手面から実地臨床応用の可能性を高めることができないかと考え, 各種の処理保存血管片による上大静脈移植を検討した. この方面の研究は未だ少なく, 充分な検討もおこなわれていないので, とくに処理保存法においてはおのおの異なつた長所, 短所をもつ70%アルコール保存法と凍結乾燥保存法をとり上げ, また移植片としては同種および異種の動脈片, 静脈片について詳細な比較検討をおこなつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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