アブストラクト(19巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Gravity and Overflow Systemによる定圧冠状動脈潅流法の実験的ならびに臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 松沢秀郎, 浅野献一
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部外科教室第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 9
Page : 917-932
Year/Month : 1971 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「I 緒言」 冠状動脈潅流法(以下冠潅流とする)は直視下心内手術における冠血流遮断許容時間延長を目的としてShumwayら1)に用いられて以来低体温法による循環遮断時に冠潅流を併用して循環遮断時間延長を期待したもの2)3)や, 人工心肺による体外循環下に選択的冠冷却潅流を行なう報告があるが4)5)6)7)8), これらは大動脈根部を遮断してその中枢側に針またはカニューレを挿入しての冠潅流であるため大動脈弁膜症のように大動脈根部の切開を要する手術では実施が困難であつた. また薬物による心拍停止法に冠潅流を併用する方法も一時用いられたが9)10), カリウム塩による心拍停止法では組織学的検索にて心筋壊死を起すことが報告され11)普遍的なものとはならなかつた. 以上とは別に大動脈弁膜症ならびに上行大動脈周辺の外科適応拡大とともに冠潅流法は積極的に心筋保護を目的として手術時間延長に対処すべく研究された. Blancoら12)は冠状静脈洞より酸素化血液を逆行性に潅流したが, Lilleheiら13)はこれを臨床に応用し常温下で125cc/分の潅流量のもとで大動脈弁狭窄症の手術を行なつた. しかしShumway14)の述べたごとく本法の臨床応用にはカニューレの固定の困難性, Thebesian veinよりの潅流血の漏出, 右記領域の潅流不全, 冠状動脈口への血液逆流による手術視野の障害等の理由から広く用いられるにはいたらなかつた. 直接冠状動脈口にカニューレを挿入する冠潅流法は1958年Kayら15)が左右冠状動脈口に直接カニューレを挿入し冠潅流を行ない大動脈弁手術に成功したのが最初で, 冠潅流量, 冠潅流時間はそれぞれ150~350cc分, 42分と報告している. 現在一般には人工心肺回路より酸素化血液を分離し専用の冠潅流ポンプに導いて冠潅流を施行しているが16)ポンプ潅流では予想至適冠血流量をあらかじめ設定することになり冠血管低抗の増加にともない潅流圧が上昇し冠血管床の破綻を惹起して心筋内出血を招来することはShaw17)Hirose18)19)によりすでに報告されている. したがつて教室では定圧潅流の有利性に着目し, かつ回路を単純化したGravity and overflow systemによる冠潅流装置を開発したが20), 本論文ではその実験成績および臨床応用について検討を加えた. また一方生理生化学的により良好な冠潅流法をめざし, 補助的手段としてphasic flowによる冠潅流を検討し, また冠拡張剤であるdipyridamol(ペルサンチン)の回路内添加の影響について検索した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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