アブストラクト(19巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Fluorospirographによる左右別換気機能測定法に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 渡辺史朗, 早田義博
Authors(kana) :
Organization : 東京医科大学外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 9
Page : 945-960
Year/Month : 1971 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第I章 緒言」 肺の換気機能測定へのX線学的応用としてはHurtado1)らの胸部レ線フィルムの幾何学的測定による肺容量の算出, 深吸気, 深呼気時のフィルムにより左右肺野面積を計測することによつて左右別肺活量の推定2), 胸部のX線透過度を測定する方法としてMarchal3)のStatidensitography. 含気量によつて変化するフィルムの濃度を連続的に記録するdynamic statidensigraphy4), cinedensigraphy5), fluorodensitometry6). およびradiopneumography7)らがあげられる. 本邦でも峯木8)は二次電子増倍管を使用して正常, 病的肺野の明るさを記録して, 局所の呼吸機能の検討や, 肺気腫の程度を知る指標としている. その後, 梅垣9), 藤森10), 戸塚11), 三浦12)らはX線走査キモグラフィー, フィルム走査法を報告して, 肺換気機能検査法の開発, 利用に努力がなされたにもかかわらず, 臨床面への寄与には不十分であつた. このことは肺換気機能検査には, 肺内変化を正確に現わす定量的測定法の必要性と再現性, それに伴う装置の規模, 使用に際しての安易性等が要求されることに原因がある. 一方, 肺のX線透視条件下における明暗度の変化を肺換気機能検査に応用するという妥当性については, 肺野の明るさを左右するのは肺組織の縮張が要因で, これに血液容量の変化が加味される. しかし, これは呼吸による肺組織の縮張の変化が比較的大きいために, さして問題とはならない. また, 胸郭の軟部組織, 肋骨による影響も小さいとされている13). さらにSokolov14)は人屍体の摘出肺を用いて, 呼吸による肺組織の縮張を実験的に証明している. Schmidt15)は肺活量の75%は横隔膜の運動によつて量的変化をすると述べているが, 実際, 呼吸運動時には胸郭の拡大は多面方向で, しかも各方向とも一様でなく, 肺の縮張変化も同様に, 脊柱, 縦隔, 肺尖部に接する部位は少なく, 下位肋骨, 横隔膜に接する部位では振幅は大きい. かかる場合の胸部X線透視時の蛍光面における明暗の変化は, 肺組織縮張とは指数関数的反比例し, 肺透視野の面積とは比例的相関をすると表現しうる. 著者は, 以上の論理に立脚して, 外科治療の適応決定, とくに左右別肺機能測定検査に際して普遍的に実施されている気管内挿管法に代る方法として, 胸部レ線透視条件下において蛍光板の明暗度, すなわち, 光信号を電気信号に交換する光電変換素子として多数の光電管を左右おのおの並例に結合し, おのおの左右の出力を電気的に記録する装置を開発して, Fluorospirograph(透視曲線描記装置)と命名し16)17)18), 装置の理論的根拠と, さらに臨床的への応用の可能性について研究を行なつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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