Abstract : |
「第1章 緒言」 最近心臓手術適応の拡大にともない, 高度心不全例や長時間体外循環を必要とする症例が増加し, 術後管理も一段と複雑となつた. ことに呼吸管理はその関連する因子が多様であるため, それら病態の把握には呼吸:循環生理をはじめとして多くの知識と理解が必要となつてきている. 一方, 手術直後臨床症状として認められない潜在的な軽度の肺機能障害から, 何んらかの機転で心肺機能の不可逆的変化を結果し, 多くの努力が無に帰することは時に経験するところである. このような場合に対処するためには, 手術前後の肺機能の生理的変化を理解する必要がある. 肺機能は換気, 換気力学, ガス交換, 肺血流などの個々の変化とその相関が臨床上呼吸不全に関与することと, 心臓手術ことに体外循環下関心術においては, 体外循環なる因子が加わり, さらに手術侵襲が直接心肺におよぶため, 手術の生体におよぼす影響は他の手術にみられないほど複雑になつてくる. 開心術後の血行動態に関する研究や呼吸動態, ことに換気, 換気力学, 拡散など個々の面からの報告は数多いが, 1958年Gordh1)が指摘したごとき術後hypoxemiaと肺合併症との関連についての分析は, 心臓手術ことに体外循環下開心術においては, いまだ少ない2)~10). 以上から, 本研究は体外循環下開心術々後hypoxemiaのパターンを理解するため, 術後を三期に分け肺生理学的シャントA-a Do2を中心に経時的に術後4週間にわたり観察を行ない, ことに後天性弁膜疾患手術を中心として各疾患の術後肺機能上の特異性と問題点を指摘し, さらにその障害との相関から手術適応の拡大, 術後合併症の早期発見, 早期治療への指標を求めた. |